研究課題/領域番号 |
25440212
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
高橋 一男 岡山大学, その他の研究科, 准教授 (10450199)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 進化可能性 / 形態測定学 / 量的遺伝学 |
研究実績の概要 |
進化的キャパシターとは、発生過程を安定化することで、環境、遺伝変異を緩衝し、表現型の多型を隠すことで、遺伝変異の集団中への蓄積を促進する機構を指したものである。現在、その有力な候補と考えられているのは、分子シャペロン遺伝子の一つであるHSP90だけであるが、未知の進化的キャパシターが存在する可能性が、申請者の先行研究によって示されている。本研究では、HSP90の進化的キャパシターとしての機能の検証と、新規の進化的キャパシターのさらなる探索、そして適応促進効果の検証を目的として研究を行った。HSP90の阻害剤であるゲルダナマイシンを用いて、2種のショウジョウバエにおいて、HSP90阻害処理が遺伝分散に与える影響を検証したが、その効果は検出されなかった。この研究の成果は、学術論文としてまとめ、現在投稿準備中である。また、GAL4-UAS-RNAiシステムを用いて、翅原基および脳神経特異的なHSP90のノックダウンを行うことで、翅形態と街日行動リズムに対するHSP90の遺伝変異緩衝効果の評価を行った。実験の結果、HSP90の組織特異的阻害は、遺伝変異量に影響しない事が分かり、これまで提唱されてきた、HSP90が進化的キャパシターの1つであるとする定説に疑問を投げかける結果となった。新規の進化的キャパシターの探索については、ゲノム欠失系統を用いたスクリーニングを行った結果、剛毛数の遺伝分散に影響するゲノム領域を新たに10個発見し、研究成果はMolecular Ecology誌に掲載された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予定していた研究をほぼ遂行することができたが、今後は収集したデータの解析、論文執筆等などが必要である。
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今後の研究の推進方策 |
得られた研究成果は今後の研究の基礎となるものであるため、その効果が検出されなかったHSP90阻害などについて、詳細なメカニズムを検証していきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定していた研究は、HSP90阻害実験のサンプリングがほぼ終了し、欠測データ等の補完を行う段階にきており、既に結果の大部分が得られている。現在は1)Hsp90の進化的キャパシターとしての機能および2)Hsp90が種間の形質ギャップに与える影響の解析および論文の執筆の段階にある。予想以上の成果により、論文化の際の英文校閲および共著者との打ち合わせが改めて必要となるため、延長を申請する。
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次年度使用額の使用計画 |
必要に応じて、適切なタイミングで研究打ち合わせ等に用いる。
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