研究課題
本研究では、渓流沿いや蛇紋岩地といった異なる環境で共通に見られる狭葉化の遺伝的相同性に関して、キキョウ科ツリガネニンジンを対象に明らかにすることを目的として研究を行った。本年度は、一昨年度より実験温室にて栽培を行っている高知市産の通常型ツリガネニンジン(以下、通常型)と、高知県西部の四万十川に産する渓流沿いに生育が特化した狭葉化の形態を保有するツリガネニンジン(以下、渓流型)を用いた成長解析を行った。前年度に引き続き、葉の遺伝的変化に関する解析から、今年度の解析の結果も通常型に比べて渓流型が有意に細く、またこの値が前年および一昨年度とほぼ同じであったために、葉幅の遺伝的固定に関する前年度の結果を支持することができた。また本年度は、前年度の各器官の形態解析に加えて、新たに発芽から花芽形成までの成長解析を行った結果、通常型に対して渓流型は発芽から花芽形成までの時間が有意に短縮されていることが明らかとなった。また各器官の成長解析を行った結果、茎や葉の成長速度が有意に早くなっていることが明らかとなった。この結果から渓流型のツリガネニンジンは、通常型と比べて変化した体サイズ形成を通常型と同じ速度で形成するのではなく、加速化させて形成するために、陸上展開期の急激な短縮を起こしていることが明らかとなった。この背景として、攪乱の度合いが非常に高い渓流沿いでは陸上展開期の短縮が攪乱回避のための適応的な形質として選抜され、その結果、各器官の成長速度が通常型よりも加速化した個体が固定したと考えられる。さらに、同温室条件下における比較の結果のために、このような違いが異なる環境における要因を排除することができるために、両生態型は成長様式の違いに関しても遺伝的に固定している可能性が高く、前年度の渓流型の葉幅や葉細胞の遺伝的固定とともに、成長様式に関しても遺伝的背景が関与していると考えられる。
2: おおむね順調に進展している
本年度は、通常環境に対する渓流沿いに生育する狭葉化を示すツリガネニンジンの温室条件下における成長の比較から、成長速度の変化を明らかにすることができたため。
今後は、この加速的な成長を成功させるための資源分配様式の変化、特に貯蓄機関である根塊を中心とした解析を行うことにより、成長速度の加速化の背景を明らかにする予定である。
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