研究概要 |
本年度は、以下の3つを進めた。1は研究計画全体の推進に必須なステップであり、2と3は申請書における研究計画1(集団間の分化の解析)に該当する。 1. [検体整備]:ハブについては9島から合計400個体以上を収集できた。特に沖縄本島産については、沖縄県衛生環境研の協力のもとGPS情報付き個体の収集をかなり進めることができた。トカラハブについても2島から合計50個体以上を収集した。サキシマハブについては2島から9個体を収集した。 2. [ミトゲノム解析]:奄美大島、徳之島、沖縄本島、伊平屋島、伊江島、久米島の6島のハブ各4-5個体、小宝島のトカラハブ4頭、および石垣島、西表島のサキシマハブ各1頭のミトゲノム配列を決定し最尤法による解析を行った。その結果ハブは, 北部個体群(奄美大島, 徳之島)からなる奄美クラスターと, 南部個体群(沖縄島, 伊平屋島, 久米島)からなる琉球クラスターの2群に遺伝的に分化していることが分かった. また, トカラハブは奄美クラスターに完全に含まれた. 以上のことから, 現在ハブとされる種の島集団間の遺伝的多様性は大きく, 現在別種とされるトカラハブはその多様性の中に完全に収まるため, トカラハブのみを独立種とすることの妥当性は低いと考えられた. 3. [マイクロサテライトマーカー解析]:ハブのマイクロサテライトマーカーの単離を進めた。全ゲノムショットガンリード10 Gbを新規アセンブルして得た全長1.5Gbのコンティグから、情報学的手法により、マイクロサテライトの候補となる繰り返し領域の配列を合計1万本以上同定した。ここから十分な多型性を示すマイクロサテライトマーカーを20個単離できた。また全自動シークエンサで断片長解析を行うために通常のPCRで増幅した産物を蛍光標識する手法(ポストラベリング)の最適化を行った。
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