研究課題/領域番号 |
25440214
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
柴田 弘紀 九州大学, 生体防御医学研究所, 准教授 (80315093)
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研究分担者 |
千々岩 崇仁 崇城大学, その他部局等, 教授 (30331060)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 遺伝的多様性 / ハブ / 系統地理学 / ミトゲノム / マイクロサテライトマーカー |
研究実績の概要 |
本年度は、以下の3つを進めた。 1. [検体整備]:ハブについては10島から合計500個体以上を収集できた。このうち沖縄本島32個体、奄美大島42個体については採集地点情報も取得済みである。トカラハブについても2島から合計72個体を収集した。サキシマハブについては4島から合計22個体および国内外来種として問題になっている沖縄本島侵入個体36個体を収集した。 2. [ミトゲノム解析]:前年度の解析から、ハブは北部個体群(奄美大島, 徳之島、小宝島(トカラハブ))からなる奄美クラスターと, 南部個体群(沖縄島, 伊平屋島, 久米島)からなる琉球クラスターの2群に遺伝的に分化していることを見出していた。これに引き続いて、あらたに加計呂麻島(ハブ)、渡嘉敷島(ハブ)、伊平屋島(ハブ)、宝島(トカラハブ)、石垣島(サキシマハブ)、西表島(サキシマハブ)の各4頭計24頭についてのミトゲノム配列を決定し、これまでのデータに追加して最尤法による解析を行った。その結果、奄美クラスターと琉球クラスターの分岐年代は、400万年以上前と推定され、奄美群島と沖縄諸島の地理的な分岐(150万年前)よりも古いことが示された。一方、サキシマハブについてはその単系統性が確認された。 3. [マイクロサテライトマーカー解析]:前年度までに取得済みのマイクロサテライト配列セット1万本から、十分な多型性を示すマイクロサテライトマーカーの単離を進めた。前年度まではPCR産物の蛍光標識(ポストラベリング)を、蛍光標識済みのddUTPを用いたKlenowの交換反応で行って来たが、今年度はM13配列を5’端に付加した特異的プライマーと蛍光標識済のM13プライマーを共存させてPCRを行うことで、最終的なPCR産物を標識する方法に切り替えその最適化を行った。これによりマイクロサテライトタイピングの高速化と低コスト化が可能になった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ミトコンドリアDNAの解析が非常にシステマティックに進められる体制ができており、計画1については研究期間内での完了のメドが立った。また、多型性の高い(=情報量の多い)領域としてND2、ND5、ND6、Cytb領域を計5kb選別できたので、計画2についても検体収集およびミトゲノム解析は順調に進んでいる。一方マイクロサテライトマーカーの整備については、ポストラベリングの手法の開発/最適化に手間取ったため、当初の予定よりやや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
1. [検体整備]:前年度に引き続き十分な検体数の得られていない地域/集団の検体収集を、研究協力者の服部正策(東大医科研)および寺田考記(沖縄衛生環境研)とともに進める。特に、サキシマハブ、トカラハブの採集に力をそそぐ。また主要な10島についてはGPS情報などを参考に、研究計画2の集団内多様性検出に用いる検体セットの整備を進める。 2. [ミトゲノム解析]:ハブの生息する全ての島から各2-3個体についてミトゲノム全長を決定する(研究計画1に対応)。本年度は、入手済の黒島、古宇利島、屋我地島などの検体の解析を進める。さらに、計画1で多様性が高いことを確認済みのターゲット領域5 kbについて、計画2のために選択した採集地点情報付きの検体セット(沖縄本島32個体、奄美大島42個体)についてのデータを取得する。 3. [マイクロサテライトマーカー解析]:、M13配列を5’端に付加した特異的プライマーと蛍光標識済のM13プライマーを共存させてPCRを行うことで、最終的なPCR産物を標識する方法により、高速にタイピングを進めて行く。 4. [まとめ、論文化] 以上の各ステップからのデータをまとめ、南西諸島のハブ類の遺伝的多様性を、包括的に理解し、論文として公表する。
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次年度使用額が生じた理由 |
マイクロサテライトマーカータイピングの条件最適化に時間がかかったため、実際の大規模検体で行うタイピングにかかる費用が次年度以降に持ち越されたため。
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次年度使用額の使用計画 |
最適化された実験条件で、14年度に予定していた大規模検体でのマイクロサテライトマーカータイピングを行うことに使用する。
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