1. ミトゲノム解析によるハブ属の系統学的解析 :ハブ(Protobothrops)属全体における国内産3種(ハブ(P. flavoviridis)、トカラハブ(P. tokarensis)、サキシマハブ(P. elegans)の系統学的解析を行うために、奄美大島、沖縄本島、宝島、小宝島、石垣島、西表島の各1個体のミトゲノム配列(約17 kb)を決定し、近縁11種の配列データと合わせて最尤系統樹を構築した。その結果、ハブ属は4つの種群を含み、ハブとトカラハブは独自の種群を形成していた。またサキシマハブは、タイワンハブ(P. mucrosquamatus)などとともに別の種群を構成していた。 2. 島嶼集団間のミトゲノム多様性解析:ハブの遺伝的集団構造を詳細に検討するため、12の島から計44検体を収集し、ミトゲノム配列の決定を行った。最尤系統樹を構築したところ、ハブは沖縄クレードと現在のトカラハブを含む奄美クレードの間で大きく遺伝的に分化してた。また、トカラハブを独立種とする従来の考え方は、ミトゲノムデータからは支持されなかった。また奄美クレードと沖縄クレードの分岐年代は、600万年以上前と推定され、奄美群島と沖縄諸島の地理的な分断(150万年前)よりも古かった。さらに、沖縄クレードに比べて、奄美クレード内では遺伝的多様性が高く、島嶼集団ごとの遺伝的分化が顕著であった。 3. マイクロサテライトマーカー収集:ハブのゲノムショットガンリード10 Gbから、情報学的手法により、マイクロサテライトの候補となる配列を合計1万本以上同定した。ここから十分な多型性を示すマイクロサテライトの単離を進めた。M13配列を5’端に付加した特異的プライマーと蛍光標識済のM13プライマーを共存させてPCRを行うことで標識の効率化を量り、十分な多型性を示すマイクロサテライトマーカーを30個単離できた。
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