研究課題/領域番号 |
25440215
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
藤井 紀行 熊本大学, 自然科学研究科, 准教授 (40305412)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | シオガマギク属 / エゾシオガマ / タカネシオガマ / 台湾 / 白山 / ホザキシオガマ / 異所的種分化 |
研究実績の概要 |
国内におけるシオガマギク属(Pedicularis)植物のサンプル収集のために、宮崎県五ヶ瀬町、谷川岳、至仏山などにおいて調査を行った。また海外における調査として、台湾高山帯へのサンプル収集調査を行った。台湾北部に位置する南湖大山や合歡山などにおいて、タカネシオガマとされる集団を採集し、DNA解析のサンプルおよび外部形態比較のためのサンプルを収集した。 上記のサンプルを含め、現有のサンプルを加えて、核rDNAのITS領域や葉緑体DNAのtrnK領域の塩基配列を用いて、分子系統地理学的解析を進めた。その結果、以下の3つの成果を得ることができた。(1)エゾシオガマにおける分子系統地理学的な解析の結果、種内に3つの地理的にまとまる系統が示唆された(北海道系統、東北系統、本州中部系統)。東北地方と本州中部地方の境界付近の集団(谷川岳や雨飾山など)において、系統間交雑が原因と考えられる証拠が得られた。(2)台湾高山帯の集団はこれまで「タカネシオガマ」として扱われてきたが、分子系統解析の結果、真のタカネシオガマのクレードに入らず、九州固有種のツクシシオガマと単系統性を示すことが明らかとなった。これらの結果は台湾集団の分類学的な取り扱いに関して示唆を与えるものであるだけでなく、台湾や日本列島のアジア大陸東部の島国における種分化・生物地理を考えるうえで大変興味深い結果と言える。(3)先の項目と同様なことが石川県白山山系の集団においても明らかとなった。白山の集団はこれまで「タカネシオガマ」とされてきたが、分子系統解析の結果、ホザキシオガマであることが判明した。この結果については、2014年に論文として発表した(Fujii et al. 2014)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
台湾高山帯における採集調査を無事終えることができたこと、さらにそのサンプルのデータ解析の結果、興味深い結果を得ることができたこと、白山集団の内容について論文化することができたことなどから。
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今後の研究の推進方策 |
台湾の集団解析については、台湾南部の集団が欠けているので追加する必要がある。またツクシシオガマにおいても熊本県南部の集団を追加する必要がある。つまり論文化するためにもうすこし野外採集調査が必要である。 また系統解析の精度においてやや情報不足と思われる部分もあったことから、新しいDNAの塩基配列情報を加えた上で再評価すべきと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
ほぼ順当に使用したと思われるが、若干節約ができたためと思われる。
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次年度使用額の使用計画 |
残った助成金は次年度の研究経費として、実験試薬代等に使用する予定である。
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