研究実績の概要 |
最終年度は、赤と黒の体色を持つグループの単系統性の検証するため、まず網羅的に問題ある種について組織片を入手して、赤と黒の問題ある系統について多くの可能性を示唆された類縁性のあるタイ科の外群グループ、イトヨリダイ科、フエフキダイ科、イサキ科、Centracanthidae, Inermidae,チビキ科、タカサゴ科、クロサギ科、アカメ科、Dinolestidae等のあぶり出しを行った。その結果、タイ科とは別科とされるCentracanthidaeはタイ科の中に内包されるが間違いないと判断された。更に、赤と黒の系統の初期の段階のグループであることが、COIやCytochrome bの結果から推察され、CentracanthidaeのSpicara属は赤と黒の2グループのタイ科のそれぞれの単系統の中に内包された。このことから結局、真実の系統はかなり赤と黒の系統と単純に分かれたのではなく、複雑な系統関係であることが判明した。タイ科は大きく黒グループ(浅海性タイ科概ね100 m以浅)と赤グループ(深所性タイ科、概ね水深200 m前後)に分化して、黒グループは大陸に沿って新生代以降に分散・種分化し、赤グループは大陸移動と分裂を始める中生代ジュラ紀以降に大陸の移動と共に、大陸と一緒に深いところで分布域を広げてきたことが強く示唆されることが判明した。結局、6亜科(外部形態から単系統とされてきたグループ)とされてきたが、タイ科は赤と黒の単純な2グループで分化してきたのではなく、生態の異なるタイ科と大陸移動の過程で赤と黒のグループに大きく分かれて全世界の海域に分布するようになったと強く示唆された。これらの結果は、今後タイ科魚類の生物学的基礎的知見として今後大きく資源管理の考え方に寄与すると思われる。
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