研究課題/領域番号 |
25440217
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研究機関 | 首都大学東京 |
研究代表者 |
清水 晃 首都大学東京, 理工学研究科, 助教 (10315749)
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研究分担者 |
高見 泰興 神戸大学, 人間発達環境学研究科, 准教授 (60432358)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | クモバチ / 原始社会性 / 社会性進化 / 社会行動 / 血縁度 |
研究実績の概要 |
本研究では,原始社会性のキマダラズアカクモバチ(昆虫綱ハチ目,クモバチ科)を用いて, 社会性の進化的起源について明らかにする.特にメス間の社会行動に注目し、行動観察・形態解析・遺伝解析を総合した多面的研究により、社会性の適応的意義を探求し,その進化要因を考察する.本研究の成果は,ハチ目昆虫がなぜ社会性を進化させたかという問題に関して,重要な知見をもたらすと期待される. 野外におけるメスの行動観察: 個々のメスの行動,特に獲物(ハエトリグモ)を巣口に運び込む行動を14日間観察・記録した.多くの例では,各メスが別々の巣口から獲物を運び込む.しかし,日時を違えて2,3のメスが同じ巣口から獲物を搬入した場合が6例あった.本種の場合,営巣初期には1巣にメスが複数いることが普通なので(Shimizu 2004),複数メスが1つの巣で別々に営巣活動するとみなすことができる.ただし,この6例はいずれも異なる♀による獲物搬入が7日以上ずれているため,同時期の営巣(共巣性)とみることはできない.さらに,同一メスが日を違えて異なる巣口から獲物を搬入する場合が4例見られた.このことは,メスが営巣期間中,獲物を搬入する巣を変えることを示唆する. 2.個体間の血縁度の調査:上記例中,複数メスが同じ巣口に獲物を搬入した場合に注目し,それらのメスをDNA解析用として採取した.また,昨年に採取したメス(巣口no. 10を利用)との血縁関係を明らかにするため,同じ巣口からクモを運び入れたメスを採取した.さらに比較のため,他のメスとオスも採取した.これらの個体のDNA解析は,まとめて次年度初めに行う.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究対象であるキマダラズアカクモバチは貴重種であり,その棲息は今のところ1か所(埼玉県秩父市吉田)しか見つかっていない.ここでは10数個の巣口と約50個体のメスを確認しているが,メス間の関係(特に,同じ巣を共有する関係)を明らかにするのは容易ではない.巣そのものは外部から直接に観察することができないので.メスの巣外での行動や巣口の出入り(特に獲物搬入)の記録を丹念に収集するほかに方法がない.したがって,時間をかけて野外データを集めているところである.巣口の出入り行動に関しては,今までの3年間でかなりのデータを集めることができた.一方,DNA解析に関しては,個体数が限られているため,サンプリングにはかなりの制限がある.毎年,なるべく営巣後期にメスを少数個体採集するように努めているが,そのため,営巣個体の取り逃がしが生じるおそれがある.以上のような理由で,達成度は,行動解析に関してはおおむね順調であるが,DNA解析に関しては予定よりやや遅れている.
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今後の研究の推進方策 |
昨年と同様に,巣外でのメス間の行動やメスの巣口出入りの記録(間接的なデータ)を収集する.ファイバースコープを用いた巣上でのメスの直接観察も試みる(直接的なデータ).また,これらのデータに基づいて,同じ巣に共存する複数メスを特定し,これらの一部を採取し,DNA解析(血縁度解析)を行う.また,昨年のサンプル個体と同じ巣口を利用して営巣している個体を採取し,両者のDNA比較も行う.
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次年度使用額が生じた理由 |
DNA解析は,経済および効率の面を考えて、試料がまとまった次年度早々に行う予定であるため.
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次年度使用額の使用計画 |
DNA解析および野外調査のために使用する.
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