研究課題
本研究は,原始社会性のキマダラズアカクモバチ(昆虫綱ハチ目,クモバチ科)を用いて,特にメス間の社会行動に注目し、行動観察・形態解析・遺伝解析を総合した多面的研究により、社会性の適応的意義を探求し,その進化要因を考察するものである.1.野外におけるメスの行動観察: 個々のメスの行動,特に獲物(ハエトリグモ)を巣口に運び込む行動を11日間観察・記録した.本シーズンの活動個体の数は例年とくらべて少なく,マーキング個体はメスで16個体,オスで13個体であった(2015年:メス42,オス28).各メスは別々の巣口から獲物を運び込み,複数のメスが同じ巣口から獲物を搬入した例は0であった(昨年は6例).また,同一メスが獲物を搬入する巣を変える場合が1例見られた(昨年は5例).このことは,メスが営巣期間中,巣を変えうることを示している.さらに,1メスが巣に運ぼうとした獲物を他のメスが奪って,自分の巣に運び込んだ場合が1例観察された(昨年は4例).同じ巣場所で営巣するメス間に,しばしば獲物の奪い合いがあることは間違いない.2.個体間の血縁度の調査:昨年に採取したメスとの血縁関係を明らかにするため,昨年のサンプル個体が利用したのと同じ巣口から獲物を運び入れたメスを採取した.さらに比較のため,約100m離れた他の営巣場所のメスとオスも採取した.これらの個体の血縁度推定に関してはまだ最終結果が出ていない.しかし,昨年までのサンプルを解析し,雌雄ごとの2営巣場所間の遺伝的分化を検討した結果,以下のことが明らかになった. 1)対立遺伝子および遺伝子型の類似に基づく計算から,メスは営巣場所間で遺伝的に十分に分化している;2)オスは営巣場所間で遺伝的に分化していない.そのことから,営巣場所間の遺伝的交流は,雄でより活発に行われていると考えられる.
すべて 2017 2016
すべて 雑誌論文 (18件) (うち国際共著 4件、 査読あり 18件、 オープンアクセス 18件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 3件)
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