クモバチ科の原始社会性の進化的起源を明らかにするため,キマダラズアカクモバチのメスの営巣・社会行動を調べた.その結果,複数メスが同一巣で営巣する(共巣性の)可能性があり,また,一部のメスは営巣期間中に巣を変えることがわかった.また,約100m離れた2営巣地で活動する個体間の遺伝的分化を解析した結果,メスは営巣地間で遺伝的に分化しているが,オスはあまり分化していないことがわかった.営巣地間の遺伝的交流はオスによって行われ得るものの,同じ営巣地の個体は遺伝的類縁性が高いと考えられる.本種の原始社会性の進化と維持には,巣場所への定着性(低移動性)による血縁集団の形成が関与している可能性がある.
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