研究実績の概要 |
本研究の目的は、分岐年代推定の信頼できる方法を確立することである。 現生の古顎類鳥類はすべて南半球に分布するため、ゴンドワナ超大陸起源と考えられていた。ここでは頑健な分岐年代推定が必須だが、そのために密なtaxon samplingが重要だ。しかし古顎類は起源が古い割に現生系統が少ないために、絶滅した系統も含めた解析が望まれる。我々は、完新世に絶滅したマダガスカルのエピオルニス科2属の古代DNA解析を行い、ミトコンドリアゲノムの全塩基配列と核ゲノムの約74,000bpの配列決定を行い、現生種データと併せて解析し、従来の定説を覆す結果を得た。 古顎類進化がゴンドワナ超大陸の分断とあわせて進んできたという従来の説が成り立つためには、我々の得た分岐年代は若過ぎる。Prumら(2015)は鳥類全体のTime-treeを発表したが、分岐年代推定に関しては我々のと多くの点で矛盾する。外群のとり方で彼らの解析には致命的な欠陥があるが、我々の推定値はcalibrationのとり方に依存しない頑健なものであることが示された。 リトルニスという初期の古顎類化石が北半球で見つかっているが、収斂進化の影響を受けない形態形質を解析した結果、これが古顎類系統樹の根元から由来していることが分かった。また現生種のなかでダチョウが根元から派生していることを考慮すると、興味深い可能性が浮上した。ダチョウは現在はアフリカに限られるが、かつてはユーラシアにも分布していた。これらのことから、古顎類はもともと北半球で進化したものが、北米から南米に渡り、当時陸続きであった南極、オーストラリアへと分布を広げた可能性が高い。 二ホンツキノワグマはアジアクロクマの一亜種であるが、アジアクロクマの亜種間の進化やその時間スケールに関しては不明なことが多かった。我々はミトコンドリアゲノムの解析により、二ホンツキノワグマの進化についての新たな知見を得た。
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