研究実績の概要 |
本年度は,前年度までに完了した日本産イソギンチャク類のタイプ標本類の現地調査(平成25年度コペンハーゲン大学動物博物館(現デンマーク自然史博物館)およびイェール大学ピーボディ自然史博物館,平成26年度ルンド大学動物学博物館,ウプサラ大学進化動物学博物館およびスウェーデン国立自然史博物館,平成27年度ロンドン自然史博物館)によって観察した62標本の情報を整理するとともに,タイプシリーズから刺胞観察のために作成したプレパラート標本(22種分)の解析を進めた. 前年度までに採集できなかった鹿児島県喜界島をタイプ産地とする種および神奈川県三崎をタイプ産地とする種の新規標本の探索を試みた.このうち,三崎をタイプ産地とするAureliana japonica Carlgren,1940は,原記載が刺胞データの記述のみであり,その他の形態学的情報が全く不明であったが,タイプ標本の観察結果に基づいて,平成26年の調査にて採集されたイソギンチャク類標本を精査したところ,本種と同定される可能性が非常に高い標本が含まれていることが判明した.本種については本年度,さらに新規標本の採集を試みたが,追加標本を得ることはできなかった.また,同じく三崎をタイプ産地とするAiptasia pulchella Carlgren, 1943は,分類学的再検討が必要であると考えら得れているが,国内では原記載以降採集されておらず,検討が進んでいなかったが,本年度の調査によってタイプ産地から本種と考えられる新規標本を得ることができ,その検討を進めた. これまでの研究成果のうち,特にロンドン自然史博物館に収蔵されているタイプ標本について学会発表を行った.また,本研究の過程で得られたイソギンチャク1種について,新種記載論文を発表した.そのほか1編を投稿中であり,それ以外についても投稿準備中である.
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