研究課題/領域番号 |
25440226
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研究機関 | 独立行政法人国立科学博物館 |
研究代表者 |
藤田 敏彦 独立行政法人国立科学博物館, 動物研究部, グループ長 (70222263)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 系統 / 分類 / 進化 / クモヒトデ綱 / クモヒトデ目 / 骨格 / 分子系統 / マイクロCT |
研究実績の概要 |
収集したクモヒトデ綱クモヒトデ目標本の観察・分析を実施した.また,カバーする属・種を増やしていくために,昨年度に引き続き,国立科学博物館のプロジェクト調査や日本学術振興会アジア研究教育拠点事業などにより,新たな標本も入手した.
標本の形態観察は,腕の骨格を中心として,走査型電子顕微鏡,樹脂包埋などによって,微細な形態の観察を実施した.また,昨年度観察条件等を検討した実験動物用X線CT装置(アロカ株式会社,ラシータLCT-100)ならびにX線マイクロCT装置(コムスキャンテクノ株式会社,ScanXmateB100TSS110)を用いることにより,内部骨格や軟組織に埋没している微小な骨片などの観察を行った.これらの微細な形態観察によって,特に腕の側腕板と腕骨にはこれまで知られていない多様な形態が認められ,14科にわたる微細形態の比較を行いつつある.
分子系統解析については,昨年度までにプライマーの設計をほぼ終え,今年度も新たにデータを追加した.これまでに,28S rRNAが48種,18S rRNAが16種,ミトコンドリアの16S rRNAが26種,ミトコンドリアのCOI領域が18種から配列のデータを得ている.これらの配列データを用いて,各遺伝子での系統解析を行った結果,最も多くの種のデータが得られている28S rRNAによる解析で最も信頼度の高い系統樹が得られた.28S rRNAでは,クモヒトデ目内に上科あるいは亜目階級に相当する5クレードが認められたが,それぞれに複数の科が含まれており,従来の分類体系を見直す必要があることが示唆された.ただし,OphioleucidaeやAmphilepididaeは1個体しか扱っていないため,これらの科の単系統性については,さらに種数を増やした解析が必要である.その他の遺伝子ならびに,複数の遺伝子のデータを組み合わせた用いた解析では,まだ信頼度が高い系統樹には至っておらず,これらの遺伝子のデータをさらに蓄積することが必要である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
走査型電子顕微鏡ならびに樹脂包埋標本を用いての観察を進めるとともに,マイクロCTによる観察を行うことができた.
核の28S rRNAではデータを大幅に増やすことができた.それ以外の遺伝子,核の18S rRNA,ミトコンドリアの16S rRNA,ミトコンドリアCOIについても,DNA分析の結果を取得することができた.
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今後の研究の推進方策 |
本研究で目標としている,多数の種を含めた密な分子系統解析を実施するために,さらに,他の博物館標本調査,新たな標本採集を継続することにより,形態・分子とも解析・分析する種を増やす.
DNA解析を継続して進める.特に,28S rRNA以外の遺伝子に関するデータが不十分なので,データの追加を行うことにより,より信頼度の高い系統を明らかにする.
分子系統解析による結果と,腕の骨片を中心とした骨格の微細な形態とを合わせて解析を行い,クモヒトデ目の分類体系を見直し系統進化について考察する.
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次年度使用額が生じた理由 |
予想外の天候の不順により予定していた採集調査の一部が実施できなかった.その調査により入手する予定であった分の標本の分析ができなかったため,次年度に行うこととした.
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次年度使用額の使用計画 |
これを補う採集調査を次年度に実施する予定であり,その調査による追加標本について,走査型電子顕微鏡,樹脂包埋,マイクロCTによる微細な形態の観察ならびに分子系統解析のための塩基配列データを得るために使用する予定である.
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