本研究は適応放散過程にあるトラフグ属魚類の多様性進化における種内変異と種間交雑の役割について,主に遺伝マーカーを用いて検証することを目的に実施した。トラフグ属魚類2種(A種とB種)において,自然下で大規模な交雑現象が起きていることが明らかになり,また交雑がB種雌とA種雄間の方向で偏って起きていることが明らかになった。雑種第一世代(F1)の多くはA種方向に戻し交雑していることが明らかになり,これら戻し交雑個体は両親種やF1よりも形態学的多様性に富むことが示された。これらの結果から,種間交雑を介したB種からA種への一方向的な遺伝子流動と,A種のもつ遺伝的・形態学的種内変異との関連性が示唆された。
|