研究課題/領域番号 |
25440228
|
研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
和田 哲 北海道大学, 水産科学研究科(研究院), 准教授 (40325402)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | 配偶者選択 / 闘争行動 / 社会情報 / 意思決定 / 無脊椎動物 |
研究実績の概要 |
本研究は、ホンヤドカリ属のオスでみられる配偶者選択について、「オスは配偶者選択時に、他個体との遭遇履歴を社会情報として利用している」という仮説と「オスは他個体との遭遇履歴を、その他個体に関する独自情報として利用している」という仮説を検証する。 平成26年度は以下の成果を得た。 ・オスの配偶者選択における過去のオス間闘争における勝利・敗北経験が及ぼす影響と、過去に対戦した相手の有無が及ぼす影響を、ヨモギホンヤドカリを用いて検証した。その結果、過去の対戦における勝敗経験は本種の配偶者選択に影響を与えていたが、過去の対戦相手の存在は配偶者選択に影響を及ぼさなかった。またオスの配偶者選択におけるメスとの遭遇頻度の影響をヨモギホンヤドカリで検証した。テナガホンヤドカリでは、遭遇頻度の低いメスを長時間ガードする傾向が見られるのに対して、本種ではメスとの遭遇頻度はオスの配偶者選択に影響を与えていなかった。 ・オスが他のオスと配偶相手をめぐって闘争する際の攻撃行動において、相手のオスとの過去の遭遇履歴が及ぼす影響を、ホンヤドカリを用いて検証した。その結果、相手のオスとのオス間闘争の経験だけでなく、同居した経験だけで優劣関係が成立し、その後のオス間闘争における攻撃行動回数を減少させる影響が見られた。 ・オスの配偶者選択に対する他のオスの配偶行動の影響を、テナガホンヤドカリを用いて検証した。野外で交尾前ガードペアだった個体を採集してきて実験対象個体とした。メスをガードしているオスが別のメスあるいは別の交尾前ガードペアと遭遇したときの行動を比較した結果、オスは別のメスと遭遇したときよりも別のペアと遭遇したときのほうが、また、相手が自分より小さいときのほうが、相手に対して積極的に接近する行動が観察された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度おこなっていなかったヨモギホンヤドカリにおけるメスとの遭遇頻度を操作した実験を実施し、さらに過去のオス間闘争経験が配偶者選択に及ぼす影響も検証した。ホンヤドカリではオス間闘争経験だけでなく、同居経験もまた、その後のオスの行動に影響を与えることが分かり、テナガホンヤドカリでは、他のオスがガードしているメスを高く評価する傾向が示唆される実験結果が得られた。当初の研究計画から変更された点はあるが、これらの成果から、研究目的の達成度という観点から、研究はおおむね順調に進展しているといえる。
|
今後の研究の推進方策 |
今年度の実験結果から、メスとの遭遇履歴を社会情報や独自情報として利用する度合いにおける3種の種間変異が明らかになりつつある。今後も検証に努めるとともに、研究成果を学会発表や高校生を対象とした「ひらめきときめきサイエンス」事業、オープンキャンパス・実習などを通して公表する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
論文執筆が遅れたため。また、2015年3月に予定していた日本生態学会における学会発表をとりやめたため。
|
次年度使用額の使用計画 |
現在執筆中の英文校閲や4月下旬から始める実験に必要な経費によって速やかに使用できる予定である。
|