研究課題/領域番号 |
25440229
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
佐藤 慎一 東北大学, 学術資源研究公開センター, 助教 (70332525)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 底生動物群集 / 大規模干拓 / 常時開門 / 有明海 / 韓国 |
研究概要 |
有明海の諫早湾干拓では,5 年間の常時開門が法的に義務づけられている.韓国でも,始華湖干拓では開門開始から16年になる一方,世界最大のセマングム干拓では2006 年に防潮堤が完成し,近い将来に水門が閉め切られる可能性がある.本研究では,これら日本と韓国の大規模干拓周辺海域において,閉門・開門の実施前後に防潮堤内外の定点で採泥・採水調査を定期的に実施することにより,急激な環境変動に伴う底生動物群集の種構成の変化を比較し,これらのデータを基に大規模干拓事業が周辺海域に及ぼす影響を予測・検証する.そして,本研究により得られた結果を基に,日本と韓国の研究例を比較して,その共通点(普遍性)を明らかにすることで,大規模干拓事業の将来を詳細に予測することが可能となり,国際的な環境問題に対して客観的データに基づいた提言を行うことを目的とする. 本年度は,諫早湾干拓調整池および奥部海域の採泥・採水調査を実施し,常時開門直前の諫早湾周辺海域における環境や生物相に関するモニタリング調査を実施した.そして持ち帰った試料を基に,堆積物の粒度分析や,底生動物の拾い出し,二枚貝類などの種レベルでの同定などを実施した結果,潮受け堤防閉め切りから16年間にわたる水質・底質・底生動物相の変化を明らかにした.一方,韓国セマングム干拓においても同様の現地調査を実施し,大規模堤防建設に伴う底生動物相の変化を明らかにした.これらのデータは,将来的には水門開放後に見られる環境と生物相の変化と比較するための基礎的データとなる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度に計画された有明海と韓国セマングム干拓における採泥・採水調査を実施することができた.また,これまでに採集した試料の粒度分析や,ソーティング作業が完了し,過去16年間にわたる水質・底質・底生動物相の変化が明らかになった.これらのデータは,将来的には水門開放後に見られる環境と生物相の変化と比較するための基礎的データとなる.
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今後の研究の推進方策 |
申請時には,2013年末までに諫早湾干拓の常時開門が実施されるはずであったが,2014年3月現在で実施されていない.しかし,諫早湾干拓を巡る事態は予断を許さない状況であるため,今後も常時開門が実施された場合には,即在に対応して採泥・採水調査の回数や定点数を増やすように準備を進めている.
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次年度の研究費の使用計画 |
諫早湾干拓において,2013年末までに常時開門が開始されることを想定して,開門直後の採泥・採水調査を準備していたが,常時開門が延期になったことで次年度に使用することとした. 次年度使用額は,平成26年度申請額とあわせて,諫早湾干拓および韓国の始華湖干拓・セマングム干拓周辺海域における現地調査に使用するとともに,諫早湾干拓において常時開門が実施された際には採泥・採水調査の回数と定点数を増やすことで即座に対応する予定である.
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