研究課題/領域番号 |
25440238
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 和歌山大学 |
研究代表者 |
古賀 庸憲 和歌山大学, 教育学部, 教授 (50324984)
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研究分担者 |
吉野 健児 佐賀大学, 学内共同利用施設等, 助教 (40380290)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 対捕食者反応 / 二次的性形質 / 脱皮 / ヤドカリ |
研究概要 |
テナガツノヤドカリの大形オスは、小形オスやメスに比べ相対的に長いハサミ脚を持つ(メスの獲得に有利な二次的性形質)。しかし、被食リスクが高い時、大形オスは長いハサミ脚を、被食リスクを軽減するため脱皮でより縮小し、小形オスやメスと同程度の相対サイズにすると予測する。本来、脱皮とは成長のために大型化、また自切したハサミ脚や歩脚の再生のために行うが、本種では脱皮の常識を覆す現象が起きているか調べるのが本研究の目的である。高い被食リスクを認識し、同一個体が脱皮により目立つ部位のみ小さくしているとしたら、節足動物を中心にさまざまな分類群で見られる「脱皮」に関する世界初の発見になるであろう。 本種が捕食のリスクにどう反応しているかを調べるために、条件の異なる3種類の水槽を準備し、野外の雄の鉗長に変化が見られる春と夏に実験を計画した。水槽はまず2つに仕切り、ヤドカリを入れる側を更に3つに仕切り、各仕切り内に個体識別可能なサイズの4個体を入れた(1水槽当たり12 個体)。別の側は(a)捕食者、(b)同種ヤドカリの死体、(c)何もなし、の3条件の水槽を各7個準備し、昨年8~10月に実施し、本年4月下旬から現在実験中である。途中で生じた脱皮殻は全て回収する。 実験終了時には全個体回収後、殻を割り実体顕微鏡下で雌雄の判別を行い、体サイズ(前甲長)とハサミサイズ(鉗長・鉗幅)をノギスで測定する。繁殖期のピークだが被食のリスクが急増する夏には、相対的に大きなハサ脚を持つ大形雄が、脱皮により鉗長を有意に短くしていた。また、繁殖期直前の被食リスクが小さい春には、たとえ捕食者がいても、大きな雄が脱皮により相対的に大きなハサミ脚を持つようになるかについて、現在実験中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画通り、昨夏に実験を実施し、おおむね予測通りの結果を得られた。そして、現在、春の実験を実施中である。また、昨夏の実験結果は国内の学会で口頭発表した。
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今後の研究の推進方策 |
テナガツノヤドカリについて、ほぼ予測通りの結果が得られたが、より強力な証拠を得るため、夏の実験を再度行う。 未調査のユビナガホンヤドカリについて、今年度に個体群の経時的調査を行い、繁殖期やサイズ変化を調べる。5月以降、毎月個体群の採集を行い、殻を割り、性別と雌では抱卵の有無を確認し、雌雄で体サイズとハサミ脚サイズを測定する。近縁種において、テナガツノヤドカリのように雄に性内二型があるのではなく、体サイズの増加と共にハサミ脚サイズの雌雄差が大きくなることが分かっている。すなわち、二次的性形質の特徴が異なる。ユビナガホンヤドカリでもそうなっているのか確かめる。 また、ユビナガホンヤドカリについて、テナガツノヤドカリと同様の実験を予備的に、しかし時期を違え、捕食圧の高い繁殖期初期の秋、および捕食圧の低い繁殖期後期の春に実施したい。テナガツノヤドカリの繁殖期は夏であるのに対し、ユビナガホンヤドカリでは冬である。したがって、ユビナガホンヤドカリが高い被食リスクを受けるのは、繁殖期前~繁殖期初期で、テナガツノヤドカリとは異なる。このように二次的性形質の特徴と高い被食リスクの 影響を受ける時期の違いが、対捕食者反応にどのような違いをもたらしているか、予備的に調べる。
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次年度の研究費の使用計画 |
使い切るよう努めたが、端数が残った。 少額なので、今年度の計画を実施していく中で使用できる。
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