研究課題/領域番号 |
25440239
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 鳴門教育大学 |
研究代表者 |
工藤 慎一 鳴門教育大学, 大学院学校教育研究科, 准教授 (90284330)
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研究分担者 |
野間口 眞太郎 佐賀大学, 農学部, 教授 (80253590)
弘中 満太郎 浜松医科大学, 医学部, 助教 (70456565)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 親による子の保護 / 栄養卵 / 母性効果 / 適応的可塑性 |
研究概要 |
1 繁殖期におけるメス親の捕食実態と被食損傷部位の把握 越冬明けのシロヘリツチカメムシ成虫に対し,標識再捕獲法を用いた調査の結果,繁殖時期の野外における死亡率がかなり高いことが判明した。さらに,本種とミツボシツチカメムシにおいて,繁殖を開始する時期に寄主植物周辺で活動中の成虫を調査したところ,雌雄問わず体の一部を損傷した個体が一定頻度で存在することが判明した。損傷が頻繁に生じていた部位は両種共に脚部と触角であり,アリ類等の捕食者の攻撃によるものと思われた。 2 非致死的捕食に応じた可塑的な栄養卵生産 捕食者の攻撃による損傷が繁殖投資にどのように影響するかを検討するため,シロヘリツチカメムシのメスを用いて,触角,後脚,そして前翅を切除する実験区と対照区を設け,恒温一定の餌条件で飼育し産卵・保護させ,繁殖投資(受精卵数と産卵前及び産卵後栄養卵数)を測定した。その結果,触角と後脚切除区で孵化前栄養卵の生産量が対照区に比べて顕著に増加した。一方,対照区と前翅切除区との間に差は検出されなかった。また,孵化後栄養卵の生産に対する切除の効果は,切除部位を問わず検出できなかった。 ミツボシツチカメムシでも同様(ただし触角切除区を除く)の切除実験を行い繁殖投資への影響を調査した。その結果,前翅切除区と後脚切除区の受精卵生産数は対照区よりも低下した。一方,後脚切除区でのみ栄養卵生産の増加が見られ,孵化幼虫当りの栄養卵投資は対照区や前翅切除区よりも明らかに高くなった。触角及び後脚の損傷は,幼虫への種子の随時給餌能力を低下させる可能性がある。部位特異的に検出された損傷に伴う栄養卵投資の増加は,Terminal investmentとは考えにくく,むしろ給餌能力の低下を補償する機能を持つ可能性が高い。触角や後脚の損傷が給餌能力に及ぼす影響は,来年度以降の検討課題である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「繁殖期におけるメス親の捕食実態と被食損傷部位の把握」と「非致死的捕食に応じた可塑的な栄養卵生産」の項目は,シロヘリツチカメムシにのみならずミツボシツチカメムシでも結果が得られ,当初の計画よりも進展している。一方,「非致死的捕食がメス親の生存あるいは保護能力に及ぼす影響」の項目は,具体的な検討ができなかった。全体として研究は順調に進展していると判断された。
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今後の研究の推進方策 |
本年度検討できなかった項目「非致死的捕食がメス親の生存あるいは保護能力に及ぼす影響」は,シロヘリツチカメムシとミツボシツチカメムシを対象にして,次年度に優先的に行う予定である。さらに来年度は,「Terminal investment 仮説」と「給餌能力の補償仮説」の峻別の鍵となるベニツチカメムシを用いた研究を開始したい。
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