研究課題/領域番号 |
25440240
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
中島 敏幸 愛媛大学, 理工学研究科, 准教授 (70314945)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 細胞内共生 / 進化 / テトラヒメナ / クロレラ / ミクラクティニウム / マイクロコズム |
研究概要 |
1 マイクロコズムにおける利益供与型クロレラの水平伝達の機構 【目的】これまで、集塊を形成しないクロレラは分離したテトラヒメナ(以後、“テトラ”)の生存率を高めることが分かっている。さらに、これはテトラの祖先に対しても生存率を高めることが見いだされた。このことは、利益供与型のクロレラは、進化的に出会っていないホスト(祖先株)に対してもその適応度を高めることを意味する。つまり、利益供与型のクロレラがある地域で進化すると、それが分散した場合、他の地域の潜在的なホストに感染し水平伝達によりホスト集団に拡散する可能性を示している。しかし、これまで祖先株に対する効果は1つの分離株で試験したのみであった。本年度、3株の集塊非形成型の分離株と2株の集塊形成分離株を用いこの仮説を検証した。【結果】集塊非形成型はすべて祖先株に対してもその適応度を高めることが明らかになり、この仮説がより信頼できるものとなった。 2 テトラによるクロレラの取り込み能力(親和性)の進化 【目的と方法】細胞内のクロレラは排泄や外から中に取り込まれることが顕微鏡観察から分かっている.進化の初期段階では潜在的な共生藻とホストとの親和性が高まっている可能性がある。このことを明らかにするため、テトラとして、祖先株と分離株の計8株、また藻類株として祖先株と1つの分離株(テトラに対し延命効果を持つ)の2株を用い、これらのテトラと藻類を総当たりで組み合あわせ、テトラによる藻類の取り込み率と排泄率を計測した。【結果】分離テトラヒメナは、(A) 積極取り込み型:藻類祖先株と分離株いずれに対しても高い取込率を示す (B) 選択型:藻類分離株に対する取込率は高いが藻類祖先株に対する取込率はテトラ祖先株と同程度を示す、 (C) 消極型:藻類分離株に対する取込率がテトラ祖先株と同等を示す、の3タイプに分けられることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の計画の2課題のうち、1つはほぼ十分な成果が得られ(研究実績概要の(2))、論文執筆に取りかかれる。もう一つの課題は現在検討中であり成果が不明瞭であるが、計画に挙げなかった重要検討事項(研究実績概要の(1))が先に明らかになった。この成果も,専門誌への投稿準備に着手している。以上の点から、計画は順調であると判断した。また、この研究費に補助されていない昨年度までの研究で、本研究に重要に関わる成果が、2013年に3報の論文として専門誌から出版された。本年、3件の学会発表を行った(日本原生動物学会)。
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画通り、以下の課題に着手する予定である。 課題 一つのホスト内の共生藻集団中に利己的共生者(寄生者)の便乗はあるか? 一つのCテトラ細胞内でクロレラは競争関係にある可能性がある.ホストに対し利益供与するクロレラ集団に混じって,供与しない利己的クロレラが存在するか否かは,細胞内共生の進化を理解する上で興味深い.少なくとも,細胞内共生初期段階ではこのような利己的タイプが存在する可能性もあり,細胞内共生の進化における「協調と裏切り」のジレンマ問題や「選択の単位の問題」を解析する上で重要な実験的課題である.【方法】クロレラを含むテトラ1細胞を無菌的に洗浄し,この細胞内からクロレラをすべて取り出し単離する.それぞれのクロレラについてテトラヒメナ(ホスト)に対する延命効果を計測する.また,ホスト外での増殖率,細胞のサイズ,細胞外放出代謝物の量(TOC)を測定し,ホストに対して利益供与するタイプと利己的タイプに分類する.それぞれの代表株を1つ選び混合し,テトラヒメナ内および外液での相対適応度を計測し比較する.
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次年度の研究費の使用計画 |
2013年度に予定した論文の英文校正費用およびopen access 化の費用が消費されなかったため残額が生じた。この額は、2014年度初頭に使用する予定である。 上述の理由に挙げたように、論文の英文校正費用およびopen access 化の費用を2014年度に消費すること以外に本研究課題申請時の計画と基本的に変更はない。
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