最終年度は,琵琶湖産カワニナ類の交雑検出に,シングルジーンマーカーであるフォスホーゲンキナーゼ(Pk)群の一つであるアルギニンキナーゼのイントロン(PkInt2)領域が有効であるかどうかを確認するため,昨年分析したカワニナ(非固有種)・タテヒダカワニナ(固有種)・ハベカワニナ(固有種)に加えて、新たに琵琶湖湖岸から得たチリメンカワニナ(非固有種)・ヤマトカワニナ(固有種)の解析を行った。約440bpの塩基配列に基づく系統解析の結果,特に非固有種のチリメンカワニナにおいてPkInt2領域の配列の変異が非常に大きいことが判明した。固有種群の多数が属するクレードと同一の配列を持っている個体もいたが、独自の配列を有する個体も多く、チリメンカワニナの種の核をなす配列群を特定することができなかった。この結果から、琵琶湖沿岸におけるカワニナ類の遺伝子浸透は予想以上に激しく、各種のマーカーとなる部位を発見するには、交雑の影響のない個体群を含む多数の標本および多くの遺伝子座を調査する必要があると考えられた。
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