研究課題/領域番号 |
25440244
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研究機関 | 宮城学院女子大学 |
研究代表者 |
田中 一裕 宮城学院女子大学, 学芸学部, 教授 (00316415)
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研究分担者 |
渡 康彦 芦屋大学, 教育学部, 教授 (80240539)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 羽化リズム / 温度較差反応 / 温度周期 / キイロショウジョウバエ / カイコガ / キンモンホソガ |
研究概要 |
これまでの研究から、羽化リズムに関わる温度較差反応は、地中で蛹化する昆虫に広くみられることが明らかになってきた。そこで、今年度より3年計画で、地上で蛹化する昆虫についても、その羽化リズムに温度較差反応がみられるか否かについて検討を行うことにした。地上蛹化種として、キイロショウジョウバエと、カイコ、キンモンホソガを準備した。いずれもこれまでつかったことがない種なので、とりあえず今年度は予備的なデータをとるところまでを目標とした。 キイロショウジョウバエについては、その体サイズが小さいため、現在使用しているタマネギバエ用のアクトグラフ(自動的に羽化時刻を記録する装置)をそのまま使うわけにはいかない。そこで、ショウジョウバエ用のアクトグラフの作成をおこなった。その結果、とりあえず使用に耐えうるアクトグラフを完成させることができた。 カイコガについては、光周期条件下(12L12D25℃)および温度周期条件下(12W12C、10℃較差)において明瞭な羽化リズムが得られるかどうかを確認する予備実験をおこなった。その結果、本種の羽化時刻は光周期のみならず温度周期の支配を受けること、光周期条件でも温度周期条件でも、羽化は朝に相当する時間帯におきることが明らかになった。 キンモンホソガについては、リンゴ園において越冬蛹の採集をおこない、千個体以上の蛹を集めることができた。現在、休眠蛹は低温保存中である。 本プロジェクトのもう一つのねらいは、羽化リズムだけでなく、孵化リズムについても温度較差反応の有無を探ることにある。材料としてはコバネヒメギスを選んだ。夏に北海道において、その休眠卵を数百集めることができた。現在、卵を低温保存中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度の目標は、1)新たな実験動物の飼育に慣れること、2)新たな実験動物に適したアクトグラフを作成すること、3)光周期と温度周期、それぞれの下で明瞭な羽化リズムが得られるかどうかを予備実験において確認することであった。 カイコガについてはすでに上記の点については確認を終えた。現在、様々な温度較差のもとで羽化リズムを調べはじめている。キイロショウジョウバエについては、アクトグラフは完成したが、飼育に関してやや苦戦している。ある程度以上の蛹サイズでないとうまく記録が取れないので、現在大きな蛹を得るための条件の確認中である。問題はキンモンホソガである。1000を超える休眠蛹を集めるところまでは順調だったが、うまく休眠解除ができていない。先日、一部の個体を低温期からとりだし20℃にさらしているが、いまだに羽化してこない。もしかすると休眠打破に特殊な条件を必要としているのかもしれない。休眠解除に必要な条件を現在探しているところである。いずれも初めて飼育する種ばかりなので、その扱いに慣れるにはしばらく時間がかかるかもしれない。コバネヒメギスの休眠卵については、時間の都合で、まだ加温実験をおこなうにいたっていない。
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今後の研究の推進方策 |
キイロショウジョウバエとキンモンホソガについては、すでにアクトグラフが完成しているので、うまく羽化させることができれば、今後は順調にデータを収集できると思われる。今年度は、まず光周期条件下および温度周期条件下で羽化リズムを確認する。その後、異なる温度較差条件下に蛹をおき、温度較差が小さいほど羽化位相が前進するか否かを確認する実験を行う予定である。カイコガについては、まもなく後者の実験を始める予定である。 コバネヒメギスについては、休眠卵をの休眠を打破した後、ショウジョウバエ用アクトグラフにいれて、孵化リズムの検出が可能かどうかについて予備実験を行う予定である。孵化リズムをうまくとることができることが確認できたら、次にさまざまな温度較差のもとに卵をおき、孵化リズムにも温度較差反応がみられるかどうか調べる予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
出張中の虫の世話を学生アルバイトに任せる予定であったが、学生アルバイトを得ることができなかったため。結局、卒業生のボランティアとなった。 次年度も出張中の虫の世話を誰かに頼まなければならない。次年度も、学生アルバイトを雇う予定である。
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