研究実績の概要 |
平成27年度は、下記の研究を実施した。 1. 採集した各地の個体群において敵対性試験を実施したところ、(1)Mendozaには4コロニー、Saltaには1コロニーが分布しており敵対性を示す個体群が少ない一方、Buenos AiresのOttamendiやCABA(Ciudad Autonoma de Buenos Aires)には小さい地域に敵対性コロニーが複数コロニー生息していることが明らかとなった。このことから、Panama Riverを中心とする地域がアルゼンチンアリの原産地であることが示唆された。 2. 平成26年度に加え、新たにアルゼンチン国内で採集したアルゼンチンアリサンプルを用いて、ミトコンドリアDNA遺伝子解析を行った。その結果、4つのクレードに分けられた。1つは、世界中に分布しているMain supercolonyを含み、アルゼンチン各地の個体群からなるクレードである。2つめは原産地La Plata、国内侵入地SaltaおよびMendoza、3つめは原産地Ottamendi, Buenos Aires、国内侵入地ChubutやBuenos Airesの他個体群、4つめが東京都で発見されたTokyo supercolonyのみを含む。Panama Riverにおける交易や鉄道の発達に伴い分布拡大したと考えられる。 3. 敵対性試験と分子遺伝解析の結果から、敵対行動が遺伝子型と一致しないことが明らかとなった。侵入地では、敵対性スーパーコロニーがそれぞれ異なるハプロタイプを有し、スーパーコロニー内では遺伝的に均一である。一方、本研究から異なるハプロタイプを有するコロニー同士が敵対性を示さないことが観察された。さらに、敵対性試験では全く敵対性を示さなかったが、同一空間で飼育すると互いに攻撃し合うことにより、コロニーが崩壊する例もみられた。これにより、原産地であるアルゼンチンでは社会構造もより複雑である可能性が示された。
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