研究課題
鹿児島大学 園田俊郎教授(2005年に退官)と愛知癌センター田島和雄元所長(2015年に退官)らは疫学調査のために20年以上の年月をかけて世界中の辺境地域に居住する少数民族約3,500人から血液検体を採取した。このような民族は外部との接触が極端に少なく他民族との混血などの遺伝的影響が少ないと考えられる。また、検体採取後に滅亡した民族や部族も含まれ、質・量ともに、同等の検体は二度と採取することができない世界的にも貴重かつ希少なコレクションである。報告者らはこのコレクションの中の南米先住民族29部族約550人からB細胞株を樹立し、この細胞株を用いて南米先住民族の環境適応に関わるゲノム領域を探索することを計画した。南米先住民族の居住地は、標高4,000mを超える高原であったり、主食となる植物に毒性があるなど、他の大陸での定住よりも過酷な選択がかかっていると考えられる。このような環境適応を明らかにすることで、南米における人類の移動や定住のプロセスが明らかになると期待される。本研究では、環境適応に関連するゲノム領域として一塩基多型(SNP)およびコピー数多型(CNV)を探索し、適応すべき環境として高地と毒性植物を摂取する低地を設定した。これまでの申請者らの解析により、南米先住民族のゲノム多様性は他の地域よりも小さいことが明らかになっている。また一夫多妻制などにより、部族内における血縁関係は複雑である。このような要因から、解析すべき集団から、血縁個体を排除するための条件検討などに当初の予定以上の時間を要した。H26年度までに血縁個体を排除するための条件を設定し、部族間の類縁関係を明らかにした。部族間の類縁関係と上記環境要因に相関が認められたことから、H27-28年度で比較解析を行い、環境要因と相関すると考えられるSNPをいくつか同定することができた。
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