研究課題/領域番号 |
25450001
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
研究機関 | 帯広畜産大学 |
研究代表者 |
大西 一光 帯広畜産大学, 畜産学部, 助教 (50526704)
|
研究分担者 |
山本 将之 富山大学, その他の研究科, 講師 (10456402)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | 幼芽期低温抵抗性 / イネ / QTL |
研究概要 |
低温はイネの栽培地域や生産性を制限する最大の要因の一つである。これまで幼芽期低温抵抗性遺伝子qCTP11に関してファインマッピングを行い、1つの候補遺伝子を絞り込んだ。抵抗性型対立遺伝子を持つA58と感受性型対立遺伝子を持つW107および「ほしのゆめ」を用いた遺伝解析、および候補遺伝子の塩基配列の比較から、1. qCTP11座による低温抵抗性の発現は劣性の遺伝様式を示すこと、2. ファインマッピングにより絞り込まれた候補遺伝子に関して、A58型(抵抗性型)対立遺伝子は73 bpの欠失により機能欠損型のタンパク質をコードすること、の2点が明らかとなり、候補遺伝子の機能欠損により低温抵抗性が付与される可能性が極めて高いことが示された。 本年度は、戻し交雑後代によりA58にW107よりqCTP11領域を導入したA58 qCTP11-W(BC7-8)、および「ほしのゆめ」にA58よりqCTP11領域を導入したおよびHos qCTP11-A(BC3-4)を育成した。「日本晴」ゲノムでは、約950 kbp下流に塩基配列レベルで99%の相同性を持つパラログが存在する。qCTP11候補遺伝子およびパラログについて、低温処理と無処理の条件で発現を比較したところ、両条件とも「ほしのゆめ」よりもA58で強い発現を示した。このことから、A58の示す幼芽期低温抵抗性は、qCTP11候補遺伝子の機能が正常に働かないことに起因する可能性と、qCTP11候補遺伝子の機能欠損によりパラログの発現が上昇したことによる可能性が示された。今後はqCTP11座候補遺伝子の形質転換体作出による相補性検定を行い原因遺伝子を特定する。また、A58と「ほしのゆめ」遺伝背景のNILを用いた発現解析を行うとともに、qCTP11候補遺伝子とパラログそれぞれの過剰発現イネまたはノックダウンイネを作成し、発現解析を行なう。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
材料育成と発現解析については予定通り進行している。qCTP11座候補遺伝子の形質転換体はまだできていないが、次年度以降に予定していた発現解析を本年度先に進めることができた。
|
今後の研究の推進方策 |
qCTP11座候補遺伝子の形質転換体作出による相補性検定を行い原因遺伝子を特定する。W107型もしくは日本晴型のqCTP11座候補遺伝子(5’上流域、コード領域および3‘下流域を含む)をクローニングしたバイナリーベクターを作製し、これを用いてA58の形質転換を行う。なお、5’上流域については、少なくとも3 kbpの配列を用いる。作出した形質転換体(T0世代)より得られた種子を用いて幼芽期抵抗性試験を行い、導入遺伝子の有無と低温感受性の相関を調査する。A58の形質転換効率が低く、形質転換体が得られない場合には、「ほしのゆめ」にA58からqCTP11領域を導入したNILsを用いて形質転換体の作出を行う。 平成25度までに作出したA58および「ほしのゆめ」を遺伝背景とした準同質遺伝子系統NILsを用いて、温度や生育ステージによる低温抵抗性の変化や、qCTP11座の非生物的ストレス(塩や乾燥)への効果を調査する。qCTP12については、A58にW107からqCTP12領域を導入した戻し交雑集団を用いて、マッピングを進める。平成25年度、BC5F2集団を用いた結果、分離が明瞭でなかったことから、さらに戻し交雑を進めたのちファインマッピングを行うことも検討する。
|
次年度の研究費の使用計画 |
当該年度に予定していた実験および富山大学と帯広畜産大学での研究打ち合わせを次年度に行うため。 実験消耗品および打ち合わせのための旅費として使用する。
|