性染色体を持つ代表的な植物種のパパイヤについてその性決定機構および性発現の制御機構を解明すべく、ゲノムレベルの解析を行った。本年度は、前年度までに見出したY染色体特異的なMADS boxドメインを持つSVP-like遺伝子の機能解明をすべくcDNAの単離とタグの付加を行い、バイナリーベクターに組み込むことで一過的遺伝子発現を試みた。 雄株(Y染色体)から単離したSVP-like遺伝子のcDNAと共に両性株(Yh染色体)からも同遺伝子のアリルのcDNAを単離した。両性株のアリルではトランスポゾンの挿入により、5'側の構造が変わり、予測タンパク質ではMADSbboxドメインの欠損が推定された。これらの遺伝子について雄、両性株のパパイヤでの発現量をRT-PCRで比較すると、花、葉などの各器官で発現が見られたが、相対的に両性株では発現量が低いことが見出された。これら各性のSVP-like遺伝子のcDNAにHAおよびHisタグを付加し、pRI201ベクターに組み込んだ。各発現ベクターはアグロバクテリウムGV3101株に導入し、Nicotiana benthamiana葉でアグロインフィルトレーションを行うことにより、一過的に遺伝子発現を行うことを試みた。比較対象としてGFPを発現するベクターを保有するアグロバクテリウムの接種も行った。インフィルトレーション2日後の葉からタンパク質を抽出し、ドットブロットを行ってHAおよびHisタグ抗体により発現タンパク質の検出を行った。その結果、Y染色体上のSVP-like遺伝子(Hisタグ付加)では明確に発現が確認できた。Yh染色体のアリル(HAタグ付加)は発現は見られたが発現量は低かった。従って、両性(Yh染色体)におけるSVP-like遺伝子はmRNAおよびタンパク質の発現安定性が低いことが示唆され、これが性分化に関与する可能性が考えられた。
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