最終年度である本年度は、動原体DNA領域の研究とセントロメア解析の実験を行うとともに、4倍体化にともなう花の大きさや色、形、芳香等の有用形質を4倍体と2倍体で比較し、DNAやヒストンレベルのエピジェネティックな変化と関連づける研究を行った。 フウラン(Neofinetia falcata)で作製されたCHENH3(動原体特異的ヒストン3)のペプチド抗体を用いてのCHIP解析で得たDNA断片をクローニングし、その数をさらに増やしてFISH解析を行ったが、目的とする動原体DNA配列は得られなかった。しかし、別のプロジェクト費用による研究ではあるが、本研究で得られたCHENH3抗体を利用した次世代シーケンサーによるChIP-Seqで網羅的に解析した結果では、動原体DNA候補配列が予想することができた。ヒストンリン酸化抗体(H3S10ph、H3S10phK14ac)で中期染色体の動原体周辺を検出することができ、細胞分裂が進行するにつれてリン酸化されたヒストンは減少することがわかった。特に、H3S10phK14acは植物における染色体のセントロメアを同定する細胞学的マーカーとして利用することができる。 4倍体化により、花や植物体のサイズが大きくなる傾向が見られた。また、フウランとRhynchostylisの雑種の場合では、より芳香が強くなる組合せが見られた。2倍体に比べて4倍体ではDNAのメチル化がより広範囲に起こるが、ヒストンのメチル化、アセチル化、リン酸化の程度において違いは見られなかった。
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