研究課題/領域番号 |
25450009
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
研究機関 | 佐賀大学 |
研究代表者 |
穴井 豊昭 佐賀大学, 農学部, 教授 (70261774)
|
研究分担者 |
渡邊 啓史 佐賀大学, 農学部, 講師 (40425541)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | ダイズ / 突然変異体 / イソフラボン / MYB |
研究概要 |
本研究は高度に重複したゲノムを持つダイズを材料として、MYB転写因子に変異を導入することで、近年、機能性成分として注目を集めるイソフラボン類を含むフラボノイド化合物の代謝経路に関与する複数の酵素遺伝子の発現を協調的に制御し、これらの化合物の子実中での蓄積量を調節することを目指したものである。 イソフラボンは一般的に試験管内で比較的強い抗酸化活性を持ち、近年、食品の機能性成分としても注目を集めているが、このうちダイズ子実中に含まれるゲニステインは弱いエストロゲン様作用を示すほか、ダイズィンやそのアグリコンであるダイゼインには骨粗しょう症を予防する効果があることも知られており、ダイズのフラボノイド代謝経路の改変により、子実中のイソフラボン蓄積量を増加させることが期待されている。 そこで、本研究は、我々がダイズにおいて開発してきた逆遺伝学的変異体スクリーニングシステムを利用して、子実中のイソフラボン含量の改変に利用できる新たな突然変異体の単離を目指しており、本年度は、①ダイズ子実中でフラボノイド代謝に関与する酵素群の遺伝子の発現を制御しているMYB転写因子をコードする標的遺伝子を特定するため、ゲノム塩基配列情報および遺伝子発現解析の結果に基づいた絞り込みを行うことと、②TILLING法を用いたスクリーニングにより、これらの標的遺伝子に突然変異を生じた系統を単離することを目的として研究を進めた。 その結果、イソフラボン代謝遺伝子の発現制御に関与していると考えられるMYB遺伝子の同定に成功したほか、いくつかの突然変異候補系統を得ることに成功した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
登熟中のダイズ種子サンプルを用いたHPLCによるイソフラボン含量の分析データと、DNAマイクロアレイを用いた遺伝子発現解析のデータの比較により、未熟種子中のイソフラボン合成に関与する代謝酵素遺伝子とこれらの発現と協調的な発現パターンを示すMYB遺伝子の同定に成功した。さらに、これらの標的遺伝子の一部についてはTILLING法による変異体のスクリーニングに着手し、複数の変異体候補系統を見出した。現在の所、これらの候補系統中にナンセンス変異を生じた個体は得られておらず、更に規模を拡大した変異体のスクリーニングが必要であると考えられる。しかしながら、初年度の目標についてはほぼ達成しており、研究計画はおおむね順調に進展しているといえる。
|
今後の研究の推進方策 |
2年目以降の研究計画については、当初の計画通りTILLING法による変異体のスクリーニングを続け、標的となるMYB遺伝子の機能が欠損した系統の探索を進める。また当初の計画では、得られたMYB突然変異候補系統を栽培し、未熟種子におけるイソフラボン代謝関連遺伝子の発現量をqRT-PCRによって解析し、それらの変異MYB遺伝子の効果を評価する予定であったが、より短期間で変異MYB遺伝子の効果を評価するため、MYB転写因子の標的となるイソフラボン代謝関連遺伝子のプロモーター配列とレポーター遺伝子を融合したキメラ遺伝子を導入した遺伝子組換え植物を用いた評価系の作成にも取り組み、研究期間内での目標達成に向かって研究を加速化させる。
|
次年度の研究費の使用計画 |
主に当初予定していた研究発表のための学会参加費(旅費)と論文投稿のための経費(その他・謝金)等の執行がなかったため。 2年次以降の研究発表、論文投稿費用として使用する予定である。
|