研究課題/領域番号 |
25450012
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研究機関 | 国立遺伝学研究所 |
研究代表者 |
久保 貴彦 国立遺伝学研究所, 系統生物研究センター, 助教 (00370148)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 花粉キラー / 雑種不稔 / イネ / 遺伝子単離 |
研究実績の概要 |
本課題では、イネの“花粉キラー”の分子・生理機構を明らかにすることを目標として、原因遺伝子の単離同定と分子ネットワークの解明に取り組む。H27年度は、次の3項目を進めた。(1)花粉キラーS24の回復遺伝子EFSの相補性検定:EFS候補遺伝子の形質転換体を育成し、本年度はその自殖後代(T1)において花粉稔性の調査を行った。結果として、EFS候補遺伝子導入による有意な稔性回復効果は認められなかった。(2)S24遺伝子の相補性検定:候補遺伝子として特定したインディカ由来Ankyrin遺伝子を日本型品種あそみのりに導入したS24過剰発現個体(ASO-S24OE)とS24ヘテロ不稔個体との交配種子F1を育成した。しかしながら、温室空調の故障により、それらの自殖種子が得られなかったため、予定していた自殖後代F2での解析はH28年度に延期した。(3)S24座に複数の関与遺伝子が存在する可能性を推察し、S24領域の詳細な遺伝学的解析を進めた。その結果として、S24と密接に連鎖する新規遺伝子INKを同定した。これにより、S24領域は花粉不稔に関わる複雑な遺伝子構成を有することが明らかになった。本成果は論文で公表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2つの遺伝子(EFSとS24)の遺伝子単離については、当初計画時に期待していた結果は得られていない。このことは本現象が単一遺伝子の相補性実験で証明できるような単純な発現機構ではないことを示唆している。両遺伝子座について、複数遺伝子関与の可能性を推測し、さらに詳細な遺伝子解析を進めているところである。本研究における新規遺伝子INKの同定は、本現象の複雑な遺伝的制御機構の解明につながる重要な成果であった。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの結果に基いて、S24とEFSの候補領域の詳細な解析と相補性検定を引き続き進める。また、過去研究報告より、複数因子が原因の可能性も考えられるため、複数遺伝子のCotransformationに向けた材料育成を検討する。相補性検定に目処が立ち次第、候補遺伝子の機能解析を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
イネ組換え体閉鎖温室の空調機器の故障によって、開花期のイネが高温にさらされた結果、検定に必要な十分量の種子が実らなかった。種子を得るためには、遡って播種(春に実施)から再実験をする必要があるため。
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次年度使用額の使用計画 |
前年度に進められなかった実験計画の再実験に係る物品費や、得られた成果の発表に必要な旅費として使用する。
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