イネの未知遺伝子や機能を持つゲノム領域の解析には、これまでにない変異を持つ系統の開発が有効である。申請者はイネ内在性のDNAトランスポゾンnDartを同定して解析を行ってきた。nDartはイネ内在性の非自律性のDNAトランスポゾンで、GC含量の高い遺伝子領域に挿入し易い性質を持っている。nDartの転移は、ゲノム中に一因子の自律性因子aDart1-27によって誘導され、次世代において自律性因子の分離において、転移は起こらなくなる。その挿入領域の同定は、AFLP法を改変したDart-トランスポゾンディスプレイ法を用いる事に因って、効率良く行うことができる。従来は変異体を選抜して原因遺伝子を同定する遺伝学的手法を用いてきたが、本研究計画では、nDartによるタギングラインにおけるトランスポゾンの挿入領域を網羅的に同定して逆遺伝学を行なえる基盤作りを行う事を目指す。nDart/aDart1-27をコシヒカリに導入したMK-1系統を創出し、本年度も3000個体の変異系統を育生したので、全挿入領域の同定に向けて解析をおこなった。また、しばしば優性の変異体も出現するので、不完全優性でわい性となる突然変異体Bushy dward tiller 1変異体の原因遺伝子を同定し、優性となる原因を明らかにした。Bdt1変異体には、マイクロRNA156d遺伝子の転写開始点の上流におけるnDartへの挿入が起きていた。nDartの挿入により機能のあるマイクロRNAの発現量が上昇していることが、優性変異の原因となっていることを明らかにした。
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