研究課題/領域番号 |
25450018
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
加藤 盛夫 筑波大学, 生命環境系, 助教 (90204502)
|
研究分担者 |
石川 尚人 筑波大学, 生命環境系, 助教 (20202963)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | 高二酸化炭素濃度 / 飼料用イネ / 再生イネ / 乾物収量 / 飼料成分 / 非構造性炭水化物 |
研究概要 |
将来予測される大気中の高二酸化炭素(CO2)濃度条件が飼料用イネ品種の成長,収量および飼料品質に及ぼす影響に関する基礎的知見を得ることを目的として,(独)農業環境技術研究所の開放系大気CO2増加(FACE)実験施設において栽培実験を実施した.実験水田に現在の大気CO2濃度(約390ppm)と将来予測される高CO2濃度(+200ppm)条件を設定し,利用用途により特徴の異なる飼料用イネ専用品種として子実多収型品種クサホナミと茎葉多収型品種リーフスターを栽培して,成長経過,乾物収量,飼料成分および稲発酵粗飼料(ホールクロップサイレージ)の発酵品質を評価した.また,大気CO2増加が食用米収穫後の再生イネの成長と飼料価値に及ぼす影響を明らかにするために,再生イネを収穫して乾物収量および飼料成分を評価した.2013年栽培試験の結果,飼料用イネの品種特性に関わらず、成長過程および乾物収量には高CO2濃度の有意な影響はみられなかった。サイレージ発酵品質および発酵に影響する非構造性炭水化物含量にも高CO2濃度による有意な差はみられなかったが,子実多収型品種クサホナミでは糖のうちスクロース含有量が高CO2濃度により増加したので,飼料品質との関係をさらに調査する必要がある.食用米収穫後の再生イネ収量は高濃度CO2処理により増加し,飼料成分では中性デタージェント繊維含有率が増加した.刈株1茎あたりの非構造性炭水化物含量と再生イネ乾物収量との間に有意な相関関係が認められたため、高濃度CO2処理が刈株への非構造性炭水化物蓄積を促した結果、再生イネの収量が増加した可能性が考えられた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2013年は(独)農業環境技術研究所の開放系大気CO2増加(FACE)実験施設において栽培実験を実施し,現在の大気CO2濃度(約390ppm)と将来予測される高CO2濃度(+200ppm)条件を設定し,特徴の異なる2種類の飼料用イネ専用品種を栽培して,成長経過,乾物収量,飼料成分および稲発酵粗飼料(ホールクロップサイレージ)の発酵品質を評価するとともに,食用米収穫後の再生イネを収穫して乾物収量および飼料成分を評価することができた.飼料用イネについては成長過程,乾物収量およびサイレージ発酵品質にも高CO2濃度による有意な差はみられなかったが,食用米収穫後の再生イネ収量は高濃度CO2処理により増加し,飼料成分では中性デタージェント繊維含有率が増加することを確認できた。
|
今後の研究の推進方策 |
高二酸化炭素濃度条件下で栽培することにより飼料用イネでも収量が増大し、それに伴い飼料成分にも変化があらわれると仮定していたが、2013年の栽培実験では材料とした特徴の異なる2種類の飼料用イネ専用品種とも成長,乾物収量および飼料品質には明確な影響はみられない結果になった。この現象が2013年の気象条件下によるものなのか、2014年も継続実験により確かめることにより、高二酸化炭素濃度に対する応答が利用用途の異なる飼料用イネでは食用品種とは異なるという知見が得られるかもしれない。子実型品種クサホナミでは茎中のスクロース含有量が高CO2濃度条件で増加する傾向がみられているので、サイレージ発酵品質の詳しい分析を続行する。また、再生イネの飼料品質をより詳しく調べるため、今後、消化率試験を行うことにより可消化繊維の含有率を分析するとともに、栽培期間を2週間以上に延長した場合の再生イネ飼料品質を調査する必要がある。
|
次年度の研究費の使用計画 |
飼料用イネのサイレージ発酵調製用にクールインキュベータ(710千円)および発酵停止後の保管のために超低温ストッカー(480千円)の購入を計画していたが、作成したサイレージが多量になったため発酵調整は調査室の室温下で行うこととした。また、調査室内に共通機器としてディープフリーザが新規導入されることとなり、発酵サイレージの保管に利用することが可能になったために機器の購入を控えた。代わりに飼料成分分析に頻繁に使用する分光光度計の付属品として一滴測定ユニット(294千円)を購入した。 2013年の飼料用イネの採取点数を計画より増やしたこと、また、飼料成分および非構造性炭水化物の分析項目を増やしたことにより、2013年度中に分析を終了できなかった試料がかなりの点数残っている。次年度使用額は2013年度試料の分析用フィルター、各種試薬、酵素類、分析キットの購入に充てる。
|