研究課題/領域番号 |
25450019
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 宇都宮大学 |
研究代表者 |
和田 義春 宇都宮大学, 農学部, 教授 (80201268)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 光合成 / ダンチク / Arundo donax L. / 水利用効率 / 炭酸固定効率 / Rubisco / Chlorophyll |
研究概要 |
平成25年度には,わが国のダンチク5系統(海士,双海,口之津,波佐間,知念)と米国の系統(San Diego)の計6系統を宇都宮大学農学部の環境調節棟ガラス室および屋外で栽培し,標準条件(大気CO2濃度400μmol/mol,光合成有効放射2000μmol/㎡/s,葉温28℃)下での光合成能力および光-光合成曲線とCO2-光合成曲線を調査した.比較の対照としてC3植物のイネ(品種タカナリ)とC4植物のトウモロコシを用いた.標準条件下での光合成能力(Amax)はSan Diegoが37±μmol/㎡/sとトウモロコシ40±4μmol/㎡/ sと有意差がない高い値を示し,口之津は33±4μmol/㎡/sとトウモロコシよりは有意に低かったが,イネ28±3μmol/㎡/sよりは有意に高かった.ダンチクの水利用効率(WUE)およびCO2補償点(Γ)はイネと同程度で典型的なC3植物であった.ダンチクのみかけの量子収率(AQY)と炭酸固定効率(CE)はトウモロコシとイネの中間の値をとった.クロロフィル含量,Rubisco含量および窒素含量はいずれもダンチクの両系統がトウモロコシ,イネより有意に高かった.以上の結果からダンチクのAmaxが高いのは,C3光合成ではあるが,イネに比べ単位葉面積当たりクロロフィルやRubisco含量が高いことが関与しており,それには窒素含量や比葉重(SLW)が高いことが関連していた. また,ガラス室栽培においてダンチクのAmaxの系統間差を検討したところAmaxと気孔伝導度gsとの間に1%水準で有意な正の相関がみられ,ダンチク系統の中でSan Diegoの光合成速度が高い要因の1つは気孔にあるものと考えられた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度は,ダンチクの光合成能力について標準条件下での光合成能力をガス交換法から検討し,ダンチクの光合成能力がC3植物であるイネよりかなり高いことを確認した.ダンチクの高い光合成能力について,光合成を構成する要因である気孔伝導度,量子収率,炭酸固定効率および光呼吸から検討を行ったところ,光呼吸や水利用効率についてはダンチクは典型的なC3植物であることを確認し,高光合成能力に量子収率,炭酸固定効率の高さが関与することを明らかにした.これらについて,平成26年度以降に検討する予定であった葉内成分の関与に関する検討を先んじて実施し,量子収率,炭酸固定効率の高さに関与するのは単位面積当たりクロロフィルやRubisco含量が高いことによることを明らかにした.以上の結果を学会発表した.一方,当初予定したクロロフィル蛍光については未検討であるので,光合成機能の耐湿性,耐塩性についての検討を含め,平成26年度に実施する予定である.以上のように当初予定の研究計画より早く進んでいる部分とやや遅れている部分があるが,全体としてはおおむね順調に進展していると評価できる.
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今後の研究の推進方策 |
ダンチクの高光合成機能について,再現性を確認するとともにさらに2,3の系統を加えて系統間差について検討を進める。平成26年度には光合成機能の耐湿性,耐塩性についての検討を含めクロロフィル蛍光から詳細な調査を行う予定である。平成25年度の研究結果から,ダンチクの高光合成能には単位葉面積当たりクロロフィルやRubisco含量が高いことが関与しており,それには窒素含量や比葉重(SLW)が高いことが関連していることが示唆された.また,ダンチク光合成能の系統間差には気孔伝導度の差異が関与することも示唆された.そこでこれらの点について,葉内成分の調査を進めるとともに葉の厚さや気孔密度などの形態的側面からの解析を進める予定である.
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次年度の研究費の使用計画 |
PAMクロロフィル蛍光測定器一式および電気泳動装置等が定価・当初予定価格よりも安価に購入できたことおよび平成25年度に予定したクロロフィル蛍光の測定および光合成機能の耐湿性,耐塩性についての予備的検討を実施できなかったことによりそれに関わる消耗品等の使用が少なかったことによる. 平成25年度に実施しなかったクロロフィル蛍光の測定および光合成機能の耐湿性,耐塩性についての予備的検討を平成26年度に実施するとともに,平成26年度経費と合わせて分光光度計など分析機器の購入に有効に使用し,研究の能率と精度の向上を図りたい.
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