研究課題/領域番号 |
25450025
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研究機関 | 宮崎大学 |
研究代表者 |
石井 康之 宮崎大学, 農学部, 教授 (50211032)
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研究分担者 |
井戸田 幸子 宮崎大学, 農学部, 准教授 (40325733)
西脇 亜也 宮崎大学, 農学部, 教授 (60228244)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | ネピアグラス / 口蹄疫家畜埋却地 / 耕作放棄土壌 / 重金属汚染土壌 / 条件不利地 / 飼料生産 / 修復 |
研究実績の概要 |
本年度は,研究目的の(1)宮崎県児湯郡を中心とした九州・沖縄地域への矮性ネピアグラス(DL)の普及に焦点を当て,ⅰ)宮崎県立高千穂高校の傾斜野草地における普通種ネピアグラスの草量および飼料品質,およびⅱ)矮性ネピアグラスの耕作放棄地(樹園地)への普及の2つの研究に従事した。 ⅰ)では,宮崎県立高千穂高校宮尾野農場の傾斜野草地において,ネピアグラスの株間を1 mに固定し,畝間を1 m,2 mおよび3 mとする3水準の栽植密度を3反復設け,ネピアグラスを移植しない野草区と比較した。刈取りを1番草では8月20日に,2番草では11月17日に行った。草丈はネピアグラスが野草を上回り,乾物収量は,1番草では野草区が,2番草では,ネピアグラス区が高くなった。次に,飼料品質には,ネピアグラスの栽植密度による差異はなく,構造性のヘミセルロース含量は,ネピアグラスが野草を上回り,セミロース含量は両者同程度で,リグニン含量は野草がネピアグラスより高くなった。また,CP含量はネピアグラスと野草で同程度で,IVDMDはネピアグラスが野草を上回った。したがって,ネピアグラスは傾斜野草地に十分適応でき,良質で高収量が得られることが示された。 ⅱ)では,果樹園跡耕作放棄地である宮崎市高岡町仁田尾(以下高岡)での実証栽培・放牧試験を継続した。2012年8月16日に105株,2013年6月3日に新たに732株,2014年5月31日に422株のDLを移植し,合計約13 aの放牧草地を造成した。造成後に畦間除草を2回実施し,株の定着を促進した。放牧利用は域外の野草地を含めて,9月3日~10月17日までの2週間,繁殖雌成牛5頭により実施可能であった。したがって,定植後3~4か月に十分な草量を確保でき,嗜好性も高く,中山間樹園跡地における矮性ネピアグラスの放牧利用が可能であることが改めて実証された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
交付申請書に記載した「研究目的」には、大きく3項目を掲げている。その中で、(1)宮崎県児湯郡を中心とした九州・沖縄地域への矮性ネピアグラス(DL)の普及と(3)宮崎県児湯郡管内の口蹄疫家畜埋却地における植生管理としてのDL栽培の適応性については、研究実績に示す通り、日本草地学会宮崎大会での発表や、日本草地学会誌への投稿などにより、精力的に研究実績の積み重ねとその公表に努力してきた。また、(2)重金属(特にカドミウム)汚染土壌の修復に果たすネピアグラスの機能解明については、現在投稿論文を準備中である。 したがって、本研究は、おおむね順調に進展していると自己評価した。
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今後の研究の推進方策 |
ⅰ)宮崎県立高千穂高校の傾斜野草地における普通種ネピアグラスの草量および飼料品質 ⅱ)矮性ネピアグラスの耕作放棄地(樹園地)への普及 の両テーマともに,今後,越冬性,経年的な収量性の推移や収穫草の貯蔵方法の確立が必要である。 また、地域の生産者への栽培技術情報の発信も必要と考えられる。
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