研究実績の概要 |
南九州地域に存在する条件不利地の中で,特に宮崎県児湯郡管内に約100 ha存在する口蹄疫家畜埋却地,および全国で約40万haに上る耕作放棄地を,飼料生産あるいはバイオ燃料原料などの資源植物生産に活用するために,本研究は以下の3項目について検討したものである。 1)重金属汚染土壌に対するネピアグラスの修復機能:ネピアグラスのファイトレメディエーション機能として,ネピアグラスのCdの吸収能力を植物体の器官別に,汚染土壌および重金属投与の水耕実験により実証した(Applied and Environmental Soil Science, 2015)。 2)口蹄疫家畜埋却地の植生管理としてのネピアグラス栽培の適応性:口蹄疫被害の激しかった宮崎県児湯郡内で,乳牛32頭,肉用牛22頭,豚281頭が埋却処理された宮崎県立高鍋農高との共同研究により,埋却地の植生管理を3か年検討した。その結果,不整地で機械による管理が困難な埋却地でも,植生管理に適するネピアグラスの特性が明らかとなった(Scientifica, 2016)。 3)矮性ネピアグラスの九州・沖縄地域への普及:矮性ネピアグラスの機械移植による草地造成法(Journal of Agriculture and Rural Development in the Tropics and Subtropics, 2016),耕作放棄水田転換畑,耕作放棄果樹園跡地に矮性ネピアグラスを,県立高千穂高校宮尾野農場の傾斜野草地に,矮性ネピアグラスと普通種ネピアグラスを移植し,前二者では放牧利用を(学会発表,日本暖地畜産学会,2015),後者では採草利用を(学会発表,日本草地学会,2016)検討した。その結果,放牧利用では輪換放牧の重要性が浮き彫りになり,一方,標高300m以上の中標高地野草地でも,普通種ネピアグラスは越冬可能であることが示された。
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