研究課題/領域番号 |
25450028
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研究機関 | 東京農業大学 |
研究代表者 |
菊野 日出彦 東京農業大学, 国際食料情報学部, 准教授 (50638608)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | ヤムイモ (Yam) / ダイジョ / 挿し木繁殖 / 繁殖技術 / 熱帯・亜熱帯島嶼 / 国際研究者交流(ヤムイモ) / 技術普及(IITA経由) / 生理・生態学的研究 |
研究実績の概要 |
ヤムイモはアフリカなどイモ食文化圏において重要な主食の一つであるが、その増殖率は穀類と比較すると非常に低いため増産や規模拡大が必要となっても、翌年の種イモの需要に全く対応できないのが実情である。研究代表者である筆者はナイジェリアにある国際熱帯農業研究所(IITA)でヤムイモの挿し木繁殖による大量増殖技術の開発と確立に努めてきたが、本研究では、沖縄の宮古島という亜熱帯島嶼の特殊な自然条件下を活用し、沖縄ばかりでなく、ヤムイモを主食とする南太平洋・カリブ海島嶼国においても利用可能なヤムイモの大量種苗生産法の基礎技術の確立を行うことを目的とした。 本研究は、東京農大国際農業開発学科の熱帯作物学研究室のヤムイモ研究グループと連携し、東京農大宮古亜熱帯農場で試験を行っている。研究課題は①挿し木苗の育成に適した環境条件の選抜、②挿し木苗を利用した種イモ・食用イモの栽培方法の確立、および③組織培養を利用した健全種苗の生産体制の確立の3つの課題を柱として実施している。 平成26年度の研究成果については、本研究課題の直接の成果公表は実施しなかったが、挿し木繁殖に用いる培地の選択、挿し穂の採取時期については基礎的知見を得ることができたので、今後公表する予定である。ヤムイモを主食とするフィジーからの研修生一人を受け入れ、挿し木繁殖技術についてOn The Job形式で指導を行った。所記の目標として設定したヤムイモを主食としている南太平洋地域への挿し木繁殖技術の普及に必要なネットワークの構築に繋がった。国際農林水産業研究センターからヤムイモ遺伝資源が宮古亜熱帯農場に分譲され、保存を開始した。農大宮古亜熱帯農場を、ヤムイモを研究している日本内外の大学や研究機関、民間等が利用できるヤムイモ遺伝資源の保存拠点化に繋げたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度の試験は主に平成25年度からの試験の継続とした。本研究では、①挿し木苗の生育に適した環境条件の選抜、②挿し木苗を利用した種イモ・食用イモの栽培方法の確立、および③組織培養を利用した健全種苗の生産体制の確立の3課題を実施した。試験研究は平成25年度から参加した学生と平成26年度から参加した学生を中心に実施した。 平成26年度は台風などの襲来が少なく、順調に試験が実施できた年であった。(1)および(2)の課題については、H25年度の試験を継続しある程度のデータを得た。挿し木繁殖に用いる培地の選択、挿し穂の採取時期については基礎的知見を得たので、成果をまとめ、今後学会発表・論文化する予定である。ヤムイモの挿し木苗の機械植えについては、民間企業の協力により、汎用性の高い野菜苗の移植機を用いてペーパーポットで育苗した挿し木苗を移植した。翌年の種イモになるミニイモを収穫することができ、挿し木苗の機械移植は可能であることを実証した。 JICA実施の草の根支援プロジェクト(三重大委託)における外国人研修事業を委託・実施し、ヤムイモを主食とするフィジーからの研修生一人を受け入れた。上記挿し木繁殖技術についてOn The Job形式で指導を行った。この事業を通じて、所記の目標として設定したヤムイモを主食としている南太平洋地域への挿し木繁殖技術の普及に必要なネットワークの構築に繋がった。平成26年8月にIITAを再度訪問する機会を得、今後の共同研究や連携などについて相談した。 (3)の課題については、研究環境基盤が整い、研究協力者の協力によって圃場で栽培されているおよそ100品種の遺伝資源のin vitro化を開始した。また、国際農林水産業研究センターからのヤムイモ遺伝資源の譲渡について、正式な手続きを行い、宮古亜熱帯農場に分譲され、継代培養・ポットなどでの保存を開始した。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度の研究活動は本課題申請所期のマイルストーンに準じて以下4つの課題について推進する予定である。 課題①の「挿し木苗の生育に適した環境条件の選抜」については平成26年度末までに基礎的情報を得ることができたので、平成27年度は、挿し木苗を用いたヤムイモ品種の評価方法の開発を実施する。大量の品種を種イモを用い、大規模な圃場で肥料反応性などの農業形質の評価を行うには多大な労力がかかる。挿し木苗やそれから得られるミニイモを農業形質などの評価に利用すれば簡便で省年数、省スペースでの選抜・評価が可能である。今後の挿し木繁殖技術の発展につながる育種などにも利用可能な基礎的研究について実施する。 課題②の「挿し木苗を利用した種イモ・食用イモの栽培方法の確立」については平成26年度に挿し木苗から収穫されたミニ塊茎を圃場に植え付け、収量などの評価を行う予定である。 課題③の「組織培養を利用した健全種苗の生産体制の確立」については、昨年度in vitro化できなかったものについて組織培養を行う。また、増殖・継代された遺伝資源については、農大宮古亜熱帯農場と東京農大世田谷キャンパスの両方で保存を行い、バックアップ体制を確立する。ヤムイモ遺伝資源を圃場・温室内ポット・組織培養体として安全に保存・増殖する体制を目指し、農大宮古亜熱帯農場を、ヤムイモを研究している日本内外の大学や研究機関、民間等が利用できるヤムイモ遺伝資源の保存拠点化に繋げる。 本年度は最終年度であることから、課題④の「成果発表」については日本熱帯農業学会、国際イモ類学会および東南アジア国際農業学会(ISSAAS)などのどれかで発表を行う。7月から8月頃にナイジェリアのIITAを訪問し、研究成果について問題のない範囲でセミナーを行う予定である。今後当該研究が国際機関との連携や共同研究に繋がることを目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
消耗品等の支出やその他の支出が初期の予想より減ったために少しの残金が発生したが、おおよそ計画していた予算執行はできた。
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次年度使用額の使用計画 |
翌年度の消耗品および旅費での使用を予定している。
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