平成27年度は研究計画にしたがって以下のような研究を実施した。 1)糖輸送体遺伝子OsSUT3の機能解析 ショ糖輸送体遺伝子の一つであるOsSUT3は、既往の知見から、花粉などの雄性器官を含む開花前の頴花で高発現することがわかっていた。そこで、このことをさらに詳しく調べるため、OsSUT3のプロモーターGUS系統を作出して発現解析を行った。その結果、同遺伝子が花粉特異的に発現していることがわかった。また、RNAiによるOsSUT3遺伝子機能抑制系統では花粉のデンプン蓄積が著しく抑制されることから、同遺伝子が花粉の成熟(デンプン蓄積)のために必要なショ糖を、花粉内に取り込む働きをしていることが推測された。 2)デンプン合成系遺伝子AGPL4の機能解析 前年度までの研究により、デンプン合成系の鍵酵素であるADPグルコースピロホスホリラーゼをコードする遺伝子の一つであるAGPL4は、花粉特異的に発現することが明らかになり、花粉のデンプン合成における役割が推測されていた。本年度は、AGLP4遺伝子をRNAiにより機能抑制した系統を作出し、その花粉を観察した。その結果、AGPL4機能抑制系統は花粉のデンプン蓄積が顕著に抑制され、同遺伝子が花粉におけるデンプン合成で主導的な役割を果たしていることが明らかになった。 3)上記の結果から、花粉成熟の指標として重視されるデンプン蓄積について、その合成代謝と基質輸送のキーとなる遺伝子が新たに明らかになった。これは、従来ほとんどわかっていなかった花粉の糖代謝・糖輸送の重要な側面が明らかになったことを意味しており、今後の花粉機能の解明に向けて大きな意義がある。
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