普通ソバの収量性を改良するのに有望と思われる「半矮性系統」の遺伝様式の解明、半矮性が新規遺伝子かどうかを既存遺伝子座との対立性検定により明らかにすること、本半矮性および既存の遺伝子座について近同質遺伝子系統を作成し、栽培評価によりそれぞれの遺伝子座の差異の解明、および「半矮性系統」の施肥反応を明らかにすることを目的とした。 「半矮性系統」に自家和合系統を交配して得られたF2、および他殖性のキタワセソバと交配して得られたF2の分離はそれぞれ3:1に適合していため、この半矮性は劣性の1遺伝子支配であると考えられた。また対立検定の結果、過去に報告された遺伝子座とは異なる遺伝子を有する新規半矮性であると考えられた。 それぞれの矮性、半矮性について「キタワセソバ」をバックグランドとする近同質系統を作成して栽培比較した結果、既知の半矮性よりも概ね収量性に優れていたため、この「半矮性系統」は既存の半矮性よりも育種素材として有望であることが示された。 「半矮性系統」および 「キタワセソバ」 ともに標肥区と2倍窒素区では施肥窒素<吸収窒素,5倍窒素区では施肥窒素≒吸収窒素,10倍窒素区は施肥窒素>吸収窒素であった.また3要素多肥よりも窒素のみ多肥の方が窒素吸収の多い傾向が認められた。標準施肥量では窒素が十分でないことが明らかになったことから、ソバの栽培には不足分を地力窒素で補ってることが示唆された。また「半矮性系統」はキタワセソバよりも多肥による倒伏が少なく収穫指数が高かった。
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