研究課題
今年度は約10万個のリンゴの葯を置床し新たに「千秋」「世界一」に由来する植物体の獲得に成功した。小胞子培養も新たに試みた。小胞子培養はDH獲得効率が葯培養の約50倍高いとされているが、リンゴに関しては1例の成功例があるだけで、技術的に不明な点が多い。そこで「千秋」の休眠枝を用いて小胞子培養実験を行い、小胞子からのカルス増殖に成功した。小胞子培養にはカルスおよび胚様体の誘導培地における小胞子密度が重要と考えられるが、休眠枝を用いた開花誘導において充実した小胞子を得るためには、加温開始からサンプリングまでが約20日で経過するように温度制御を行うことが重要と判明した。開花・結実するDHの「95P6」を用いて葯培養を行った。DHを用いた葯培養系を確立することで、実験の再現性が確保され、遺伝子組換えやゲノム改変効率の向上が期待できる。「95P6」は「千秋」の葯培養に由来するDHであり、通常品種より胚様体形成率が高かったが、葯培養を経ていることにより胚形成能が高い個体が選抜された可能性が示された。これまでの研究によって「千秋」、「Starking Delicious」のDHを多数獲得し、圃場に馴化することに成功した。そのうち「千秋」由来の1個体が開花・結実した。リンゴで3例目の成果である。DHを交雑して育成したF1実生集団を用いて酸、果肉色、果汁褐変、Brix等のQTL解析を行ったところ従来の方法より解析精度が向上し、DHの遺伝解析用素材としての有効性が証明された。葯培養の手順の中で胚様体形成、シュート形成、増殖・馴化の各過程で個体数が大きく減少するが、DHを効率よく獲得するには、胚様体の速やかな発根誘導が重要であることを統計解析により明らかにした。DHの獲得が遺伝子型に大きく依存する理由は、上記の過程をすべてクリアできる品種・系統が少ないためであるが「千秋」、「Starking Delicious」、「世界一」はDHを獲得しやすい品種であることが判明した。
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The Horticulture Journal.
巻: 85 ページ: -
10.2503/hortj.MI-094