研究課題/領域番号 |
25450040
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
大川 克哉 千葉大学, 園芸学研究科, 講師 (00312934)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | イチジク / 挿し木 / 養液栽培 / 二期作 / 植物工場 / 枝梢内糖成分 / 花芽分化 |
研究概要 |
挿し木当年での果実生産が可能な苗の条件および育成法を検討した.イチジク‘桝井ドーフィン’挿し穂を1(1月区),2(2月区)および3月(3月区)に底熱処理条件下で挿し木し,定植後に養液栽培したところ,いずれの時期の挿し木においても果実は第8節目から着生したが,挿し木時期が早いほど果実重は大きく,果実収量は高かった.1月区では,挿し穂の発根率は挿し木30日後には65%,60日後には100%に達し,萌芽時における根乾物重は3月区の約3倍であった.また,1月区について,挿し木苗への培養液供給開始時期および高炭酸ガス環境下(1200ppm)での育苗について検討したところ,発根開始期および萌芽期から供給を開始すると低位葉の葉色が濃く,果実収量が高い苗が得られた.また,高炭酸ガス環境下で育苗を行うと,果実収量への影響は認められなかったものの,低位節果実の初期生育が促進され,果実の収穫期が早まった.これらのことから,萌芽時までに十分根系を発達させ,萌芽時から培養液を供給することにより挿し木当年からでも果実生産が十分可能な苗が得られることが明らかとなった. 二期作栽培樹における一期作目と二期作目における着果率,新梢成長,枝乾物重,構成糖含量の変化について比較したところ,二期作目の新梢では一期作目と比べて明らかに伸長および着果が劣っていた.また新梢内の構成糖含量を比較すると,いずれの構成糖においても二期作目の新梢では萌芽75日後まで一期作目の新梢よりも低い値を推移した.このことは二期作目での新梢低位節における花芽分化不良の要因の一つと考えられた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
イチジク周年果実生産技術の一つとなる二期作栽培におけるイチジク樹の生理・生態的特性については,一期作目と二期作目におけるイチジク樹の成長,新梢内部成分および培養液吸収特性の違いを明らかにすることができ,またそれらのことと二期作目における着果不良の要因を関連付けることができている.しかし,一部の新梢内部成分の分析についてはまだ終了しておらず,これらの分析については早急に行う予定である. さらに,挿し木当年から十分な果実生産が可能なイチジク苗の生理生態的条件および苗の育成法についてはほぼ明らかにすることができ,この方法によるイチジク養液栽培における周年果実生産技術および早期成園化技術としての可能性が十分示唆されている.
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今後の研究の推進方策 |
挿し木当年から果実生産が可能なイチジク苗の生理生態的条件および苗生産方法が明らかとなったため,それら苗の周年的な生産方法について検討を行う.そのためには,まず挿し穂の冷蔵可能な期間や冷蔵期間の違いが挿し穂の挿し木発根性や発根性に関連する内部成分に及ぼす影響を明らかにする.それとともに,人工的な低温条件下で周年的に挿し木を行い,挿し木後すぐに果実生産が可能な苗が周年的に育成できるかどうか,またそれら苗を用いた周年果実生産が可能かどうか検証する. 一方,二期作栽培についてはこれまでの結果から二期作目の樹では一期作目の樹と比べて光合成能力が劣る可能性が考えられる.そこで,培養液濃度や高濃度炭酸ガス施用が葉の光合成速度,樹体内部成分(糖,デンプン,全窒素,その他無機成分)の変化および果実の結実・収量に及ぼす影響を明らかにし,より生産性の高い栽培方法のための基礎データを得る.
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