研究課題/領域番号 |
25450040
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
大川 克哉 千葉大学, 園芸学研究科, 講師 (00312934)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | イチジク / 養液栽培 / 挿し木 / 無機成分 / 発根 / 植物工場 / 花芽分化 |
研究実績の概要 |
二期作栽培樹における一期作目と二期作目の新梢内部成分として全炭素および全窒素含量の時期的変化を調査したところ,着果や果実肥大が良好な一期作目では二期作目と比べて茎の全窒素含量が高く推移した.このことから,二期作目では樹体の窒素吸収が不活発であり,そのことも花芽分化が不良となる要因の一つと考えられた. 挿し木当年の新梢における花芽形成の要因について明らかにすることを目的に,花芽形成が良好な1月に挿し木し,底熱処理を行った苗と花芽形成が不良な4月に挿し木した苗とで定植時(展葉5~6枚時)以降の新梢内分成分の変化を比較した.その結果,1月に挿し木した苗では全窒素,リン酸,カリウムおよびカルシウム含量が高かった.これらのことから,萌芽時にある程度の根量が得られている苗では,培養液の供給開始とともに活発な無機成分吸収が開始され,このことは花芽が低節位から形成される要因であると考えられた.次に,挿し木当年に果実生産が可能な苗の周年的育成方法について検討した.まず,0℃下で冷蔵後の挿し穂の発根能および挿し穂として用いる1年生枝中の全糖およびデンプン含量について調査したところ,発根率は冷蔵300日後でも100%であったが,挿し穂当たりの根重および1年生枝中の全糖ならびにデンプン含量は冷蔵日数の経過とともに減少した.さらに,94日間冷蔵した1年生枝用いて挿し木し,5℃下で底熱処理を2および3か月行った苗を栽培したところ,上記の1月に挿し木した苗と比べて着果率が低く,十分な果実収量は得られなかった.これらのことから,挿し穂となる1年生枝を冷蔵すると発根や萌芽に必要な全糖やデンプン含量が減少し,十分な発根量が得られないため,苗の周年的生産のためにはさらに検討を要するものと考えられた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
挿し木当年から十分な果実生産が可能なイチジク苗の生理生態的条件について,特に無機成分吸収と花芽形成と関連付けて明らかのすることができている.また,このような苗の周年的生産方法については,挿し穂となる1年生枝の冷蔵後の内部成分,発根率および挿し穂あたりの根量の変化について明らかにすることもできているが,その結果から,十分な果実収量が得られる苗を周年的に生産するには,さらに検討を要することも明らかとなり,その点について次年度に検討を行う必要がある.
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今後の研究の推進方策 |
挿し木当年から十分な果実収量が得られる苗を周年的に生産する方法として,平成26年度の結果から,挿し穂となる1年生枝を冷蔵し,人工的な低温条件下で挿し木する方法では,冷蔵期間が長くなるにつれて,挿し穂当たりの根量が減少したことから,今年度は冬季の低温条件下で挿し木し,底熱処理によって発根のみを促進した苗を冷蔵し,随時冷蔵庫から出して栽培する方法により,周年果実生産が可能かどうか検証する. また,果実収量や新梢生長の低下が認められる冬季に加温する作型において,二酸化炭素施用が果実や新梢成長に及ぼす影響について明らかにすることを試みる.
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