研究概要 |
液中で安定してプラズマを生成できる電極を開発し,ホウレンソウなどの水耕栽培において,多大な被害を及ぼす萎凋病の原因菌であるフザリウムを対象に,培養液へのプラズマ照射による殺菌効果を検証した。プラズマガスの種類,ガスの流量,溶媒,吹付方法を変化させてプラズマ照射実験を行い,フザリウム菌胞子の生菌数の変化を調べた。 溶媒として滅菌蒸留水を用いた場合には,O2, Air, He, Ar, N2の全てのガス条件でフザリウム菌胞子を死滅でき,特に,O2, Airの条件では5分以内で死滅した。この理由は,特に,酸素に起因するオゾンの生成が殺菌に大きく寄与した。一方,オゾンを全く生成しないHe, Arガスの条件でも,それぞれ10分,20分以内でフザリウム菌胞子を死滅できることを確認した。次に,溶媒として培養液を用いた場合には,AirとN2の条件ではフザリウム菌胞子を完全に死滅させることができなかった。この理由は,N2に起因するラジカルが,培養液中においては,フザリウム菌胞子の殺菌に寄与するラジカルの生成を阻害していると考えられる。しかしながら,培養液においても,オゾンを生成しないHe, Arの不活性ガスを用いた液中プラズマにおいて,20分の照射でフザリウム菌胞子を完全に死滅させることができた。したがって,植物の生育を阻害するオゾンガスを発生させることなく,液中プラズマによって培養液の殺菌が行える新たな知見を見出した。 また,プラズマの照射方法についても,プラズマによる表面処理方法として通常用いられている吹き出し方式などと比較して,我々の研究室で開発した液中プラズマ方式の方が殺菌効果が高いことを検証した。そして,培養液の連続照射実験や生育促進確認実験に向けて,プラズマ発生用のパルス電源や,連続照射用電極の設計を行った。
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