本研究では、これまでに京都府のトウガラシ疫病発生圃場から単離した疫病菌株の病原性の違いによる新たな抵抗性遺伝子座を明らかにすることを目的として行った。さらに、同じナス科のトマトやナス等のゲノム情報を駆使し、実際の育種場面でマーカー選抜に利用できる疫病抵抗性選抜のためのPCRマーカーの開発も目指した。 本研究では15℃条件下での葉身接種検定により菌株間と品種間の比較試験を行った。由来の異なる疫病菌4菌株の病原性については、与保呂系菌株とpph菌株が同程度で病原性が強く、続いて大原野系菌株となり、明石系菌株が最も病原性が弱いことが明らかになった。また、疫病抵抗性5品種の抵抗性の程度については、‘CM334’と‘CM2M-54’が全ての菌株に対して強い抵抗性を示したが、その他の品種については菌株によって抵抗性が弱くなることが示された。 一方、与保呂系菌株とpph菌株を用いて遺伝解析集団の疫病抵抗性を評価し、QTL解析を行ったところ、既報の2つのQTLは、どちらの菌株においてもほぼ同じ位置に認められた。さらに、LOD値は低いが新たなQTLとして、LG9に両菌株に共通のQTL、LG7に与保呂系菌株に特異的なQTL、LG1にpph菌株に特異的なQTLを検出した。また、2つの菌株に共通で寄与率の高いLG5に座乗するQTL近傍のDNAマーカーを、トウガラシEST由来のSSRマーカー、RAPDマーカーおよびトマトで開発されたCOSⅡマーカーから探索し、37cMのQTL領域に新たな6マーカーをマッピングした。LOD値の最も高い位置には、RAPD由来の2つのCAPSマーカーとCOSⅡマーカー由来のSNPsマーカーを得ることができ、これらのDNAマーカーは実際の育種場面でマーカー選抜に有効に利用できるものと考えられた。
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