1)花弁に含まれるカロテノイドの大部分はキサントフィルであり、そのほとんどがエステル化されていることが明らかになっている。しかし、ペチュニアのカロテノイド組成を分析したところ、ビオラキサンチンやネオキサンチンのみエステル体となっており、その他のキサントフィル類は大部分がフリー体であった。このことから、ペチュニアのカロテノイドエステル化酵素(EST)には基質特異性があることが推測された。 2)ジニアおよび黄花イポメア属植物由来のEST遺伝子を含むコンストラクトを淡黄花品種であるペチュニア‘カリフォルニアガール’に導入した。EST遺伝子のうち、ジニア由来のESTを導入した個体には野生型と有意に組成に差が生じたものは得られなかったが、イポメア由来のESTを導入した個体からは野生型には含まれないβ-クリプトキサンチンが検出された。また、これらの系統は、花弁に含まれる総カロテノイド量が上昇した。黄花イポメアの花弁の主なカロテノイド成分はβ-クリプトキサンチンであることから、①ESTは種によって異なった基質特異性を持ち、この特異性が花弁カロテノイドの組成の決定要因の一つとなっている(ペチュニアESTはビオラキサンチン・ネオキサンチン、イポメアESTはβ-クリプトキサンチンを基質とする)、②エステル化されたカロテノイドはその先の生合成反応が進まない(β-クリプトキサンチン脂肪酸エステルはゼアキサンチン脂肪酸エステルにはならない)、③エステル体となることでカロテノイド蓄積量が増加する、以上3点の可能性が示された。 3)上記をさらに明らかにするために、さまざまな植物由来のEST酵素タンパクを大腸菌内で発現させ、精製することを試みたが、ESTタンパクは大腸菌内では分解され、完全長のタンパクは得られなかった。
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