研究課題/領域番号 |
25450052
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研究機関 | 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構 |
研究代表者 |
阿部 和幸 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, 果樹研究所・リンゴ研究領域, 上席研究員 (70370559)
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研究分担者 |
森谷 茂樹 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, 果樹研究所・リンゴ研究領域, 研究員 (90391474)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 果樹 / 品種 / 病害抵抗性 |
研究実績の概要 |
斑点落葉病抵抗性の早期判別システムを確立するために、中度罹病性の遺伝様式を明らかにして遺伝因子の座乗領域を推定した。 ふじとゴールデンデリシャスの交雑に由来するF1集団64個体を供試して、斑点落葉病菌の接種試験により抵抗性程度を評価した。また各個体のSSRマーカー遺伝子型とSNPマーカー遺伝子型を用いて、double pseudo testcross法によって親品種の連鎖地図を構築し、接種試験結果を用いてQTL解析を行った。 ゴールデンデリシャス連鎖地図の第11連鎖群、SNPマーカー「271」上でLOD値が最大となり、QTLの存在が認められた。2回行った接種試験それぞれの結果に関して、検出されたQTLの信頼区間は重複しており、表現型(接種試験結果)に対する当該QTLの寄与率は37~49%であった。この結果から、第11連鎖群に座乗するQTLがふじとゴールデンデリシャスの交雑実生集団における斑点落葉病中度罹病性を支配する主要な遺伝因子であると判断された。 ふじ、ゴールデンデリシャスそれぞれに劣性ホモ型品種を交雑した検定交雑由来の実生集団におけるの斑点落葉病抵抗性/罹病性の分離をみたところ、ゴールデンデリシャスの後代実生では期待どおり抵抗性と中度罹病性がほぼ1:1の割合で出現した。この結果はゴールデンデリシャスが中度罹病性遺伝子をヘテロ接合型で有することを示していた。一方、ふじの後代では抵抗性の出現率が90%以上の高頻度であった。この結果は、ふじの中度罹病性を支配する遺伝因子がゴールデンデリシャスに認められる中度罹病性遺伝子とは異なる可能性を示唆していた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、リンゴ斑点落葉病に対する抵抗性品種を効率的に育成するため、本病に対する抵抗性/罹病性に関する各種表現型の遺伝様式を解明するとともに、各表現型を制御する遺伝因子の連鎖マーカーを開発することにより、本病に対する抵抗性リンゴの早期選抜方法を確立することを目的としている。 平成25年度は、500個体程度の解析用実生個体の接種試験を行って表現型データを蓄積するとともに、中度罹病性の遺伝様式を解明することを当該年度の目的として研究を実施し、PAPを用いた分離比分析によって、王林や世界一などの品種に認められる斑点落葉病中度罹病性が単一の遺伝因子によって支配されることを明らかにした。 平成26年度は、連鎖解析による中度罹病性原因遺伝子の連鎖地図上へのマッピングが目的である。本年度ゴールデンデリシャスとふじの交雑実生集団を供試してQTL解析を行い、ゴールデンデリシャスに認められる中度罹病性が第11連鎖群のSNPマーカー「271」の近傍に座乗する遺伝因子によって支配されることを明らかにすることができた。 このように、平成25~26年度にかけて、当初の目的どおりに研究が進捗して期待どおりの結果が得られている。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度は、リンゴ斑点落葉病抵抗性/罹病性を支配する各遺伝因子に強く連鎖するDNAマーカーを明らかにすることによって、斑点落葉病に関する各種表現型の高精度な判別システムの確立を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
ゴールデンデリシャスにおける斑点落葉病中度罹病性の連鎖解析を実施するに当たり、当初は100個体以上を解析に供する予定であったが、実際には60個体程度を解析することによって十分な精度で原因遺伝子の座乗領域を特定できたことから、QTL解析に要する試薬等の購入額が当初予定額をかなり下回った(節約できた)。
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度に実施予定の、斑点落葉病抵抗性/罹病性に関する各表現型の連鎖マーカー開発に使用する。
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