研究課題/領域番号 |
25450056
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 茨城大学 |
研究代表者 |
小野 義隆 茨城大学, 教育学部, 教授 (90134163)
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研究分担者 |
岡根 泉 筑波大学, 生命環境科学研究科(系), 准教授 (60260171)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | ブドウ / サビキン / さび病 / 分子系統 / 地理的分布 / 生活環 / 宿主特異性 / 種分化 |
研究概要 |
1.これまでの研究成果と本研究での形態学的特徴と宿主に基づく同定によって,日本でのブドウさび病菌には2種あることを再確認し,そのうち1種は日本列島全域に分布するが、もう1種は西日本および中部地域と東北地域の高冷地・山地に分布が偏る傾向があることを明らかにした. 2.熱帯アジアに分布するブドウさび病菌については,タイにおいてブドウ属植物さび病の発生生態を調査するとともに,これまでに収集・保存されている標本の同定を行い,タイではブドウ栽培地帯全域に広く分布することを明らかにした.また,熱帯アジアに分布するブドウさび病菌は形態的に温帯アジアに分布する2種のブドウさび病菌に類似するが,リボソームRNA遺伝子(5.8S rDNAを含む1TS領域および D1/D2領域)に基づいた分子系統解析の結果から別種である可能性が高いことが判明した. いっぽう,王立森林局植物標本館に保管されている標本を精査することにより,アンペロキッスス属植物が熱帯アジアに分布するブドウさび病菌の野生宿主植物である可能性を見いだすとともに,温帯アジアに分布するアワブキ属植物とは異なる種が異種寄生の宿主となる可能性も見いだした. さらにこの研究の過程で,アフリカに分布するアンペロキッスス属植物に寄生するフラグミディエラ属サビキンの新種を見いだした. 3.アメリカに分布するブドウさび病菌については,現地調査と新たに収集した約40点の標本を加えた多数の標本を形態学的特徴と宿主に基づいて同定することによって,アメリカに分布するブドウ属植物さび病菌2種の分類学的関係と地理的分布を明らかにした.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
形態分析に基づく種の識別に必要なサンプルが,茨城大学,筑波大学,パデュウ大学(アメリカ合衆国)に所蔵されているものに加えて,新たに本研究でアメリカ合衆国南部およびタイ王国において必要な量が収集された.その結果,アジアに少なくとも3種以上のブドウさび病菌が分布することを明らかにし,アメリカに2種のブドウさび病菌が分布することを確認した.また,アフリカに分布するフラグミディエラ属サビキン新種を見いだした.生活環研究に関しては,タイ王国での接種試験が現地の政情不安等のために実施できなくなった.そのため,タイ王国で収集したサンプルを,農林水産大臣の許可を得て国内に持ち込み,茨城大学において接種試験を行うこととなり,現在実施中である.分子系統研究に関しては,サンブルの収集を2013年度の後半から末期に実施することになったために,本格研究は2014年度に行うこととした.
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今後の研究の推進方策 |
1.2013度にやや実施がおくれていた分子系統解析を最重要課題として取り組む.具体的には、温帯アジアと熱帯アジアに分布するブドウさび病菌の系統関係およびアメリカに分布する2種の系統関係をリボソームRNA遺伝子(5.8S rDNAを含む1TS領域, D1/D2領域)の情報をもとに推定する. 2.2013年度に得られた成果をさらに発展させるべく,特にタイ王国で収集したブドウさび病菌を材料に,接種試験によって熱帯アジアに分布するブドウさび病菌の宿主特異性と生活環を明らかにする. 3.アメリカ合衆国サウスカロライナ州,ジョージア州,フロリダ州においてブドウ属植物さび病の発生生態の補足調査を行い,異種寄生の相手となる植物を探索する.
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次年度の研究費の使用計画 |
物品購入額が予定額より若干低かったため. 次年度の物品購入比に繰り込み有効活用する.
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