研究課題
透過電子顕微鏡による細胞観察にはウランが最も有効であるが、ウランは多糖類を好染しない。電顕観察に必須のウランは放射活性を有するため日本で管理と使用が制限される。このため現在ウランの欠点を改善して細胞コントラストを挙げる非放射性の重金属染色剤が必要となっている。コントラストは染色剤の染色効果・染色時間・切片厚・現像条件により変わるためその正確な評価は難しい。本研究では相対的T細胞コントラスト比法を開発したが欠点も見つけた。正確なコントラスト比の決定には写真の樹脂(最低電子密度部位)の電子密度の一定化が必要となるため、一定になるよう写真現像を行った。平成26~27年度は多様な生物種(植物・かび・昆虫)に及ぼすGdCl3、GdAc3、Smcl3、SmAc3水溶液の染色効果を調べた結果、5種の重金属は核とオルガネラ基質、生体膜のコントラストを増加させた。加えて、細胞壁、デンプン、膠原繊維も高い染色性を示し、ウランが保有しない染色性を保有することが分かった。これら重金属の染色効果はウラン塩の染色性に匹敵するため、微細構造の観察に十分である。TMVウイルス粒子を使って5つの重金属のnegative染色効果を調べた。5つの重金属のうちで、汚染と構造破壊が少なく、染色性が良かったのはGdCl3 であった。以上の結果を纏めると、GdAc3の細胞構造のコントラストの微細性は特に優れているのでウランに代わるpositive染色剤として、GdCl3 はnegative染色剤として推薦できる。
すべて 2016 2015
すべて 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 1件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 4件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (7件) (うち国際学会 1件、 招待講演 6件)
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