研究実績の概要 |
平成27年度は、トマト斑点細菌病菌(Xcv)の保持するアラビノシダーゼ群の中で、組換えタンパク質の発現が困難であったGH43ファミリーのXcvHypAAのタンパク質発現と機能解析を行った。発現用ホストに大腸菌のいくつかの系統(BL21、Origami、SoluBL21)を用いて行ったが、いずれの系統でも発現しないかもしくは不溶性タンパク質である封入体を形成するのみであった。また、封入体を用いたリフォールディングも試みたが、活性のあるタンパク質を得ることはできなかった。そこで、大腸菌とは異なるグラム陽性細菌のBrevibacillus choshinensisの発現システムを用い、外分泌系によるタンパク質発現を試みた。その結果、可溶化タンパク質を得ることに成功した。発現タンパク質の基質特異性を解析したところ、エクステンシンやナス科レクチン上(HRGPs)のハイドロキシプロリンに存在するアラビノースが3つβ-1,2結合したものにもう1つのアラビノースがα-1,3結合したAra4-Hypから、α-1,3結合部位を特異的に切断する酵素であることが明らかとなった。これまでに機能特定を行ってきたXcvHypBA2、XcvHypBA1の基質特異性も考慮すると、これら3つの酵素群が、協調的に働き、HRGPs上のアラビノオリゴ糖鎖を全て分解する働きを持っていることが明らかとなった。また、XcvHypAA遺伝子はXcvHypBA2と共に、病原性細菌の病原性制御転写因子であるHrpXにより制御されており、感染トマト上で大きく発現が促進されていた。以上の結果から、これら酵素群は、感染の場で菌体の定着、増殖に重要な働きをしている可能性が示唆された。
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