TYLCVのC3タンパク質と相互作用するトマトの宿主タンパク質として単離されたSlRPA1(replication protein A、70kDサブユニット)について、デリーション解析により、N末端の110アミノ酸がC3タンパク質との相互作用に必要な領域であることを明らかにし、さらに変異ライブラリーの検索により、相互作用能を欠失させる3つのアミノ酸変異を同定した。SlRPA1とC3タンパク質の相互作用がTYLCV感染応答に与える影響を明らかにするために、SlRPA1の野生型および各種変異型タンパク質(SlRPA1のN末110アミノ酸残基のみ、R47L、G61E、M62K)過剰発現コンストラクト、SlRPA1を標的としたRNAiコンストラクトを構築、トマト培養細胞に導入し、遺伝子組換え培養細胞系統を作出した。作出した細胞系統に対して、TYLCVを感染性クローン接種により導入し、TYLCVの増殖に与える導入遺伝子の影響を調査したが、有意な影響を観察することはできなかった。さらにSlRPA1遺伝子についての改変コンストラクト群がトマト植物体レベルで与える影響を調査するために、これらのコンストラクトを罹病性トマトに導入した各種遺伝子組換えトマトを作出した。 27年度には、SlRPA1について改変した各種遺伝子組換えトマトにTYLCVを接種し、ウイルス増殖量および病徴発現程度を評価した。その結果、野生型の過剰発現コンストラクト、RNAiコンストラクトを導入した組換えトマトでは、罹病性トマトと同様にウイルスが増殖し、病徴も現れ、感染応答反応に大きな変化は観察されなかった。一方、変異型のSlRPA1タンパク質を導入した組換えトマトでは、R47L変異SlRPA1を導入した組換えトマトにおいて、ウイルス増殖の抑制が観察された。R47L変異はC3タンパク質との相互作用を消失させる変異であり、C3タンパク質と相互作用できない変異型のSlRPA1が共存することにより、TYLCVの増殖が抑制される可能性が示唆された。
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