研究課題/領域番号 |
25450066
|
研究機関 | 独立行政法人農業生物資源研究所 |
研究代表者 |
菅野 正治 独立行政法人農業生物資源研究所, 耐病性作物研究開発ユニット, 研究員 (60242111)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | タンパク質リン酸化 / 病害抵抗性 / イネ |
研究実績の概要 |
平成26年度には、大腸菌内で自己リン酸化された組換え体BSR1タンパク質をトリプシンで分解後、LC-MS/MSで解析し、自己リン酸化された3つのチロシン残基 (Y63, Y220, Y270) を同定した。昨年度の結果から、Y220やY270を変異させると、BSR1の自己リン酸化活性が消失するが、Y63をAlaに変異させても、自己リン酸化活性が変化しないことが示されているので、変異体bsr1 (Y63A) を過剰させた組換え体イネを作出した。来年度には、この組換え体イネの病害抵抗性を検定し、チロシンリン酸化がBSR1の活性に及ぼす影響を調べる予定である。 昨年度、N末端にmycタグを付加したBSR1を過剰発現させたカルスに様々な処理を行ったが、自己リン酸化能に変化が見られなかったので、今年度は、C末端にmycタグを付加したBSR1 (BSR1::myc) を過剰発現させた組換え体イネを作成した。現在、BSR1::myc過剰発現イネの病害抵抗性を検定している。 BSR1のタンパク質リン酸化活性が消失するような変異を導入した変異体bsr1を過剰発現させた組換え体イネについて、いもち病および白葉枯病抵抗性を検定した。どちらの病原菌に対しても、野生型イネ(日本晴)と野生型BSR1過剰発現イネの中間の抵抗性を示した。このことは、BSR1が病害抵抗性を発揮する際、タンパク質リン酸化に依存した機構と非依存的機構があることを示唆する。 また、BSR1過剰発現イネとサリチル酸分解酵素発現イネを交配させた後代イネのいもち病および白葉枯病抵抗性を検定したところ、野生型イネ(日本晴)と野生型BSR1過剰発現イネの中間の抵抗性を示した。このことから、BSR1過剰発現による病害抵抗性は、サリチル酸経路依存の機構と非依存の機構によることが示唆された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
組換え体BSR1タンパク質については、自己リン酸化されたチロシン残基を同定し、Y63についてはアミノ酸置換変異体bsr1タンパク質 (Y63A) を過剰発現させたイネを作出した。また、BSR1のタンパク質リン酸化活性が消失するような変異を導入した変異体bsr1を過剰発現させた組換え体イネや、BSR1過剰発現イネとサリチル酸分解酵素発現イネを交配させた後代イネに関しては、いもち病および白葉枯病抵抗性を検定し、これらの結果からBSR1の機能について興味深い結果を得ている。更に、BSR1過剰発現イネにサリチル酸経路で重要な役割を果たすWRKY45やOsNPR1の発現抑制イネを交配した後代種子を十分量得ている。 しかしながら、BSR1::mycの解析については、現在BSR1::myc過剰発現イネの病害抵抗性を検定を行っているところで、平成27年度中にBSR1::mycの自己リン酸化や in vitro リン酸化活性を調べる予定である。
|
今後の研究の推進方策 |
平成27年度には、変異体bsr1タンパク質 (Y63A) を過剰発現させたイネでいもち病や白葉枯病に対する抵抗性を検定し、チロシン自己リン酸化がBSR1過剰発現による病害抵抗性に及ぼす影響を明らかにする予定である。また、BSR1過剰発現イネにWRKY45、あるいはOsNPR1の発現抑制イネを交配した後代についても、病害抵抗性を検定し、WRKY45やOsNPR1がBSR1過剰発現による病害抵抗性に関与するかどうかを明らかにする予定である。 BSR1::mycの解析については、BSR1::myc過剰発現イネの病害抵抗性を確認後カルスを作製し、BSR1::mycの自己リン酸化や in vitro リン酸化活性を調べる予定である。この際、キチンエリシター、いもち病菌抽出液、植物ホルモン処理の効果を調べる予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
当初の予定では、平成26年度にBSR1とキチンオリゴマー受容体の関係を解析する予定であった。しかしながら、昨年度からmyc::BSR1カルスの代わりにBSR1::mycカルスを作製しており、平成26年度に使用を予定していた免疫沈降実験用の試薬やWestern解析用の試薬の一部が不要になったから。
|
次年度使用額の使用計画 |
平成27年度に、新たにBSR1::mycカルスを作製し、免疫沈降実験やBSR1::mycタンパク質の生化学的解析をおこなうことを計画している。このために、平成27年度に免疫沈降実験用の試薬やWestern解析用の試薬等を購入する予定であり、上記の金額を使用する予定である。
|