研究課題/領域番号 |
25450069
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
天野 洋 京都大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (00143264)
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研究分担者 |
大山 克己 千葉大学, 学内共同利用施設等, 准教授 (20456081)
渋谷 俊夫 大阪府立大学, 生命環境科学研究科(系), 准教授 (50316014)
平井 規央 大阪府立大学, 生命環境科学研究科(系), 准教授 (70305655)
鈴木 丈詞 茨城大学, 農学部, 研究員 (60708311) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 環境シミュレーター / 気候環境 / 気候変動 / ハダニ / 天敵カブリダニ / ハスモンヨトウ / 害虫管理 / 休眠 |
研究実績の概要 |
制作された簡易な環境シミュレーターを活用して、各種の実験を分担の予定通り遂行した。まず、天敵と対象害虫の異なる気候条件下での適合性を、大害虫であるナミハダニと実用天敵資材であるミヤコカブリダニを使って観察した。青森・鳥取・那覇の6月から10月の気温と日長をシミュレートした環境下で、それぞれの種の発育速度と産卵数を調査する事で、天敵としての有用性を判定した。その結果、天敵ミヤコカブリダニは青森では8月、鳥取では7-9月、那覇では6-10月に有効な実績を得られた。一方、ナミハダニはそれぞれの地で、8月、7-9月、9月に脅威となる事が示された。実際の気温・日長を再現した条件下での結果は今までになく、今後の一層の活用開発が期待される。 湿度条件(水蒸気飽差)を3段階に調整して生育したキュウリ苗の実験では、低湿度環境で育つと葉面の毛じが発達し、その後のナミハダニの産卵が促進された。湿度条件の影響が害虫種や天敵種に直接影響する事に加えて、その条件下で生育した寄主植物の形態に影響して、間接的に害虫の増殖を左右するという貴重な証拠が得られた。 大阪府堺市の10年間の8月平均気温をシミュレートした区に加えて、その気温に+2℃した区、並びに+4℃した区を設定し、ハスモンヨトウ幼虫を飼育し蛹化率を観察した。+2区の幼虫は速い発育速度を示し、蛹体重はやや軽めではあるが蛹化率も非温暖区と変わりなかった。+4℃区では、ほぼ全ての幼虫が蛹まで至らず死亡した。脱皮行動の阻害が原因と思われる死亡であった。関西地区の野外条件下で観察されてきた、ハスモンヨトウ成虫の秋季に偏った発生消長は、夏期の高温の影響による可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
環境シミュレーターの適確な改良を経て、それぞれの分担研究は軌道にのった。その結果、野外の気候条件を連続的にシミュレートした環境下での、害虫種や天敵種の発生生態が判明した。実験遂行の途上で、予期せぬ停電等による多少の遅延はあったが、実験順序の変更などで対応できた。今後は、この改良した装置を使って周年的なデータの蓄積が可能となった。
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今後の研究の推進方策 |
それぞれの結果を、より広い気候条件下(より多くの地域数も含めて)で集積して、結果の精度を高めるとともに、結果で示された現象のメカニズム解析に至るような実験設定を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
1) 環境シミュレータの制御システムが、(施設の緊急停電のため)一時的に止まった影響で一部の実験を翌年度に回した。この理由により、実験順序を急遽変更して、他の実験を優先した影響で支出予定が変更になった。 2) 上記の理由で、他の分担者の担当課題に題しても影響があり、分担者も実験順序を変更した。
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次年度使用額の使用計画 |
環境シミュレータの故障ではなく、突発的な停電の影響であったため、実験そのものは翌年度に入ってからの再設定で問題なく実行できる。その際に必要な経費として回した。
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