脱皮ホルモン受容体のリガンド分子を合成し,活性の評価を行った.本研究ではジアシルヒドラジン,イミダゾール,イミダゾチアジアゾール,テトラヒドロキノリン系脱皮ホルモンアゴニストを合成し,放射性リガンドに[3H]Ponasterone Aを用いて脱皮ホルモン受容体結合親和性を定量的に評価した.結合親和性評価には細胞そのもの,あるいはin vitroで合成した受容体タンパク質を用いた. イミダゾチアジアゾール類に関しては,チアジアゾール環の2位に様々な置換基を有する化合物の活性をチョウ目昆虫の細胞Sf-9を用いて測定した。阻害活性としては[3H]Ponasterone A の取り込みを50%抑制する濃度(IC50 [M])の逆対数値pIC50を活性の指標とした.pIC50を置換基の物理化学的パラメーターを用いて解析をしたところ,8つの置換基に対して,置換基の疎水性が高く,誘起的電子的求引効果が高いほど結合親和性が高くなることがわかった.この結果を検証するために置換基の種類を増やして再度解析をおこない,置換基の疎水的および電子的求引効果に加えて,置換基の長さも重要である(短い方がよい)ことを明らかにした.また,Sf9のEcRの立体構造を構築し,受容体に対するリガンドのドッキングシミュレーションを行って,QSAR結果を検証した. 一方,脱皮ホルモンの受容体側からのアプローチも行った.すなわち,難防除害虫の一つであるコナジラミ(Bemisia tabaci)の脱皮ホルモン受容体EcR(BtEcR)のクローニングを行い,それに対する様々な化合物の受容体結合親和性を調べた.その結果,ステロイド化合物であるPonasterone Aは,他の昆虫の受容体に対する親和性と同様に10 nM程度の高い活性を示したが,非ステロイド型の化合物は活性を示さなかった.
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